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 日経ビジネス7月8日号の特集「再考 持たざる経営」では、店舗や人、物流などで企業が何を「持つか」「持たないか」の戦略が業種や企業によって分かれてきたことをレポートした。日本企業はバブルが崩壊した1990年代以降、バランスシートを軽量化する「持たざる経営」を志向してきた。資産流動化ビジネスやリース取引など、「外部化」できる手法の発達も企業の「持たない」を促した。しかし、容易に外部化できるようになった時代だからこそ、自分で持つことの重要性を意識し、外に出すものとそうでないものを戦略的に分ける必要があると、長年、企業再生やM&A(合併・買収)に関わってきたフロンティア・マネジメント代表取締役の松岡真宏氏は主張する。

なぜ企業は「持たない」ことを良しとしてきたのでしょうか。

松岡真宏・フロンティア・マネジメント代表取締役(以下、松岡):1997年の山一証券破綻に端を発した金融システム崩壊の危機、それに伴う経済の低迷が、企業を保守的な経営へと向かわせたのは間違いないでしょう。少ない資本で高いパフォーマンスを出す、筋肉質な体質にしておけば、非常事態を乗り切れると考えたわけです。「選択と集中」という言葉がもてはやされ、経営資源を複数の事業に分散することは、非効率だと考えられるようになりました。

松岡真宏(まつおか・まさひろ)氏
東京大学経済学部卒。バークレイズ証券、UBS証券などで流通業界の証券アナリストとして活動。2003年に産業再生機構に入社し、カネボウとダイエーの再生計画を担当する。2007年よりフロンティア・マネジメント代表取締役。近著に『持たざる経営の虚実』(日本経済新聞出版社)がある。

 株主構成の変化も影響しています。2000年代以降、企業の株式持ち合いが減少し、外国人投資家の割合が高まりました。「ROE(自己資本利益率)経営」との言葉に代表される通り、経営効率を高めるよう、外部からの要請が高まっている点も日本企業の姿勢を変えたと言えます。