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 ゲームや決済、配車アプリなど国内でも中国発のITサービスが浸透し始めた。百度(バイドゥ)、アリババ集団、テンセント(騰訊控股)の「BAT」を代表とする中国IT勢は、人口14億人の母国市場で磨かれたアイデアや技術力を世界に広げようとしている。日経ビジネス2019年7月1日号「敵か味方か BAT」では、「デジタル先進国」へと突き進む中国政府の動きやそれに対する脅威論、さらに日本企業の進むべき道などを検証した。

中国ではテンセントなどの決済サービスを通じた「デジタルお年玉」が普及 (写真:Imaginechina/アフロ)

 中国のIT大手に共通するのは、サービスを無料化して数多くの利用者を集め、一気にプラットフォーマーの座を奪う破壊的イノベーションの手法だ。「BAT」が中国で実践したこのやり方が日本にも波及している。

 「ヤフーショッピングヘの出店料を無料とし、日本で最大のインターネット通販の場を作る」。2013年10月、ヤフーの親会社であるソフトバンクの孫正義会長兼社長はこう宣言した。

 当時、ネット通販では楽天やアマゾンジャパン(東京・目黒)との差が大きかったヤフー。そこで始めたのが、同社のネット通販「ヤフーショッピング」の手数料を無料とする「eコマース革命」だ。この手本となったのがアリババだ。同社のネット通販「淘宝網(タオバオ)」では、中小規模の商店や個人が出店しやすいよう手数料を無料としていた。

 楽天ならばシステム手数料や月額料金などで数%程度の出店手数料がかかる。ヤフーも同様に有料としていたが、こうした料金をタダにすることで出店者を増やし、ヤフーショッピングでの商品数を拡大する戦略に打って出た。「まさか無料化するとは思っていなかったので、ヤフーの勢いには驚いた」(楽天OB)という。結果、無料化によりヤフーショッピングの出店者数は拡大し、約8000万品目しかなかった商品は約3億品目まで増えた。

 手数料はインターネット事業者にとり利益の源泉だ。目先の利益を捨ててでもプラットフォーマーの座を何が何でも取りにいく。こうした手法はアリババやテンセントなどが先行するスマホ決済でも同様だ。

 中国で発端となったのは、テンセントが14年、SNS「ウィーチャット」で始めたキャンペーンだ。「微信紅包」と呼ばれる、ウィーチャット上でお年玉を知人に送金できる機能だ。例えばグループチャット上でユーザーが200元分のお年玉を送信すると、もらえる金額が一人目は20元、二人目は10元など金額が異なる。

 遊びの要素を持たせたことで、スマホ決済の「ウィーチャットペイ」に自然とお金がたまる。たまったお金を使うために、ウィーチャットを使う。それまでスマホ決済でのシェアが約8割と圧倒的だったアリババの「アリペイ」の牙城を崩し、いまやスマホ決済ではアリババとテンセントの2強がシェアを分け合う。