写真データでわかるアップルとの違い
グーグルが開示したデータは、テレビの起動時刻を含め、87ギガバイトにも及んだ。今回調査した対象の中でもダントツのデータ量だ。
その大半を占めるのが、グーグルのクラウドサービス上に保存していた写真だ。一方、連載3回目で解説したように、アップルはクラウドサービス上の写真データを個人情報とひも付けていない。両社の個人データへの姿勢の違いがここに大きく出ている。
グーグルのウェブブラウザー「クローム」での閲覧履歴、傘下のユーチューブでの閲覧履歴、カレンダーサービスの記述内容、クラウドサービス内の保存ファイル。挙げてもキリがないぐらい様々な項目が含まれていた。
ただし、データ量が多いことで、同社が悪質だというわけではもちろんない。むしろ、ここまでのデータ量を統一的に管理できているその体制は、これまで解説してきたほかの対象企業に比べ優れているといえる。
質問窓口がない
問題は、開示された個人データに関して疑問を抱いた時、解決の手法が限られていることだ。プライバシーポリシーには、「Android TV Launcher」が何を意味するのかという個別具体的な記載はなかった。この項目がテレビの起動時刻であることを記者が解明した後も「テレビの起動時刻を何に使っているのか」という疑問を解決できなかった。この情報をグーグルに提供しないよう選択する機能は用意されているが、その機能を使うかを判断するために、まずは用途の詳細を知りたい。
こうした疑問が生じた時に質問を投げかける窓口がグーグルにはなかった。あるのはグーグルがユーザーの意見を集めるための「フィードバック送信」の機能、そして、ユーザー同士が疑問に答え合う「フォーラム」だ。
データの詳細や利用方法についてどう疑問を解決すればいいか、フィードバックに送っても返答はない。フォーラムで尋ねると「グーグル本社に聞くしかないのではないか」。しかし、グーグルの拠点紹介ページには本社の電話番号が記載されていなかった。
今度は取材として広報担当者に尋ねてみた。問い合わせ窓口がなぜないのか。回答は「ユーザーはグーグルとシェアしている情報を『アカウント情報』という機能で管理できます」だった。
そもそもダウンロードできるデータは、グーグルが保有している個人情報の全てなのかも同時に尋ねたが、上記の機能で「どんなデータがグーグルアカウントに保存されるか設定、変更ができます」という回答だった。いずれも質問をはぐらかされているとしか思えなかった。

問い合わせ窓口がないことについて、昨秋、個人情報保護委員会の其田真理事務局長へのインタビューで見解を求めると、厳しい指摘が返ってきた。「個人情報保護法第35条の努力義務に反している可能性がある」。同法35条は、企業に対し、個人情報に関する「苦情の適切かつ迅速な処理」、そのために「必要な体制の整備」を努力義務としている。
グーグルの広報担当者に再度尋ねてみた。「個人情報保護委員会からも問題視するコメントが寄せられたが、今のままの回答で問題はないか」と。
答えは変わらなかった。「すでに何度もご返信差し上げている通り、ユーザーが情報を管理する『アカウント情報』を提供しております」
記者が尋ねているのは管理の方法ではない。管理をするために必要な知識を得るための質問の方法だ。実質的な回答拒否ではないかと尋ねると、「回答拒否もしていませんし、すべて誠実にお答えしています。回答があった事実については間違いのないようにお願い致します」と返ってきた。
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