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ガイドライン改正へ

 取材当日、其田事務局長は「業界の中で誤った解釈がされているので、ガイドラインを改正します」と語った。楽天やLINEのように、開示に応じない問題が起きていることは「日経ビジネスの調査で初めて認識した」のだそうだ。委員会としての責任については「わかりやすくガイドラインを書くべきだった。反省すべきところはある」と語った。

 ガイドラインの改正案は10月初旬に発表された。消費者が開示請求するデータの範囲を指定する義務はないこと、また、事業者が消費者に請求範囲を限定させる権利もないことを明記した。

 これで、楽天とLINEが全情報の開示に応じない法的根拠が無くなる。記者はここから両社への後半の調査を開始した。

 楽天はガイドライン改正に関するパブリックコメントとして「(開示するデータの)特定のための協力を(消費者に)求めることができると記載すべき」などと意見を寄せた。しかし、個人情報保護委員会は「消費者に開示を請求する範囲を限定させることができるとの誤解を生じさせる」として、楽天の意見を認めなかった。

ようやく開示を了承したが…

 そこで改めて楽天の広報に取材を申し込んだ。しかし、同社は直接取材を拒否して、文書でこんな返答をしてきた。「(これまでの対応は、全情報の)開示を拒否するものではございません」

 前述した通り、楽天は前半の調査で「どの個人情報を開示すべきか特定するための情報をいただけない場合、開示のための調査ができかねてしまいます」としている。これが拒否でなければ、どう解釈すればいいのだろうか。

 全情報の開示請求に今後どう対応するのかを尋ねると「収集しうる情報をご提供できるように努めてまいります」。結局、開示に応じる気があるのかないのか分からない。再度問い合わせても「希望される情報をご提供できるように努めてまいります」という答えが返ってきた。

 ならばと、楽天のサポート窓口に全情報の開示を改めて請求した。返信は「開示の対象範囲を特定できる情報がございましたらお知らせください」と前半の調査よりもやや軟化した対応だった。繰り返し、全ての情報が必要であることを伝えると「可能な限り速やかに完了できるよう作業して参ります」。調査開始から半年以上たって、ようやく開示を了承したのだ。

 しかし、疑問が残る。これまで楽天は開示を「しない」のではなく「できない」と言っていたのだ。ガイドラインが改正されるからといって、なぜすんなり開示できるようになるのか。広報に問い合わせても「今後は、お客様の要望を汲み取り、より分かりやすい表現で速やかにご案内できるように改善してまいります」という回答しか返ってこない。

 楽天が本当に開示に応じるのか疑い始めた記者は、11月に開示請求書類を送付した後、1カ月以内に開示をするよう求めた。1カ月とは、EU(欧州連合)の規制上、情報開示に応じるまでのメドとされている期間だ。

 しかし楽天は、1カ月たってもなんら連絡をしてこなかった。記者からせめて開示の時期のメドを示すように再三求めても「現時点ではご案内できかねてしまいます」。結局、12月18日のメールを最後に楽天からの連絡は途絶え、この原稿を執筆している3月末時点でも梨の礫(つぶて)だ。