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 2018年3月に発覚したフェイスブックの情報漏洩問題は、ネットサービスを通じて大量の個人情報を集める「プラットフォーマー」のビジネスモデルに疑問が投げかけられる契機となった。

 日経ビジネスは事件直後から日米7社のプラットフォーマーに対して、1人のユーザーとして個人情報の開示請求をかけるという独自調査を開始。その経緯は一度、18年5月28日号の特集「7社が隠す個人情報」にまとめた。しかし、その後も情報開示に消極的な態度を示す各社と記者との論争は1年弱にもわたって続き、結果的に個人情報保護法のガイドラインの改正にもつながった。今回、その調査結果を詳しく連載でまとめる。

 第1回で取り上げるのは調査のきっかけを生んだフェイスブック。興味のないパチンコ業界から記者を狙い撃ちにした広告が出されていることが調査を通して判明。そのカラクリに迫る。

 「個人情報開示請求」をご存じだろうか。個人情報保護法は、企業に対し、ユーザー本人から自身の情報を開示するよう請求があったとき、原則応じる義務があるとしている。

 この権利を行使して、米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)、日本のLINE、楽天、ヤフーの7社に対し、1人のユーザーとして記者が「保有している私の全個人情報を開示してほしい」と請求したのが今回の調査だ。

 法制度上、企業は個人情報を取得する際、その内容をプライバシーポリシーに明記し、本人から同意を取らなければならない。つまり、ポリシーを読み込んでいれば、企業がどんな個人情報を持っているかはおおむね分かるはずだ。

 しかし、多種のデータを自動的に収集しているプラットフォーマーのポリシーは複雑かつ抽象的だ。今年1月にはフランスのデータ保護機関が、ポリシーが不明瞭なことなどを理由にグーグルに制裁金を命じた。自分がどの企業にどんな情報を取得されているか、明確に把握するのは難しい。しかも、本人が意識しないうちに、企業間でデータが売買されることも横行している(そのカラクリは、この原稿の後段で詳しく紹介する)。

 つまり、「全個人情報を開示させる」という方法をとらなければ、プラットフォーマーが自分のどんな情報を保有しているのか、全容は把握できない。だからこそ、この調査の意義がある。

ザッカーバーグの言葉への疑問

 調査のきっかけになったのが、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)の一言だった。18年4月、情報漏洩問題などに関して米議会の公聴会の証言台に立ったとき、「ユーザーはフェイスブック上の情報をコントロールできる」と発言したのだ。

ザッカーバーグ氏が証言した公聴会では、フェイスブックへの抗議運動が展開された(写真:Sipa USA/amanaimages)

 この一言で「フェイスブックがどんなデータを持っているかも分からないのに、コントロールなどできるだろうか」。そんな疑問が湧いてきた。