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 レッドオーシャンに挑む、新領域を拓(ひら)く――。新規事業に挑む企業が放つ言葉は華やかだ。だが、新しいことに取り組んだ結果、本業がおろそかになったり、顧客離れが起きたりするケースは少なくない。本来は、あくまで会社を成長させる「手段」であるはずの新規事業。日経ビジネス6月24日号「新規事業という病」では、手段が「目的」になってしまった会社の迷走パターンを研究した。

運営会社が経営破綻した「HOOTERS(フーターズ)」の銀座店。「急ぎ、焦り、縛られすぎた」と関係者は語る

 「急ぎすぎたから」「焦りすぎたから」「縛られすぎたから」……。今年3月、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、経営破綻したエッチジェー(東京・新宿)は、人気飲食店「HOOTERS(フーターズ)」の日本での展開を託されていた会社だった。破綻までの経緯を知る関係者はこぞって、新規出店という形で新しいことを急ぎすぎ、焦りすぎていた同社の実態を口にする。

 エッチジェーが、フーターズの日本国内1号店を東京・赤坂にオープンさせたのは2010年。チアリーダーをイメージした「フーターズ・ガール」の接客、オレンジ色を基調とした明るい内装、看板メニューのチキン・ウイングなどが起爆剤となって、たちまち人気店となった。

毎年1店舗ずつ出店、売上高は一時3倍近くに

 出店ペースは速く、銀座(12年)、大阪(13年)、渋谷(14年)、新宿(15年)、名古屋(16年)と毎年1店舗ずつ拡大。帝国データバンクなどによると、11年9月期に6億円程度だった売上高は、最盛期の16年9月期には17億円と、3倍近くに膨らんでいる。

 ところが風向きが一変した。経営破綻にまで追い込まれた背景として、ある関係者が強調するのは「縛られすぎ」の部分だ。米国の本家・フーターズ側との間で交わしたフランチャイズ契約上の“約束事”の存在があった。

 詳細な文言は不明だが、その約束事とは、一定の期間内に日本国内で出店しない限り、何らかのペナルティーが科されたり、出店エリアが狭まったりする内容だった。エッチジェーはこの約束事を意識しすぎ、「いったん踏みとどまることができなかった」(関係者)という。

西日本最大の歓楽街、中洲エリア。フーターズは1年余りで福岡店の撤退を迫られた(写真=アフロ)