長期の機関投資家が声を上げるのは容易ではない

 株主としての権利行使にあたり、カストディアンへの委託をやめ、自ら名義株主になるという選択肢もある。だが、その変更には時間がかかる上に、名義株主になることでの管理コストの上昇は避けたいという思いもあり、自ら名義株主になることは現実的ではなかった。そのため、臨時総会の請求には名義株主であるカストディアンの理解と協力が不可欠だった。

 しかし、カストディアンの腰は重かった。

 通常、マラソンなど年金基金や大学基金などを預かるような機関投資家は、経営者との直接的な対話を通じて長期的な企業価値向上を目指している。実際、マラソンが投資する企業の株式の平均的な保有期間は、日本株では平均8年、LIXILについては約16年も保有している。

 こうした長期の機関投資家は、臨時総会の請求など表立って株主の権利を行使することは少ない。会社側と対立して対話ができなくなることは得策ではないからだ。このため、こうした機関投資家から株式の管理を委託されているカストディアンも、会社との対立姿勢が鮮明になる権利行使に慣れていない。また、株主としての権利を乱用しているといった風評を恐れることも、カストディアンが権利行使に消極的な姿勢を取る理由だという。

 増配などを要求し、短期的な利益を追求するアクティビスト(物言う株主)は、いつでも権利を行使できるよう、一般的にはカストディアンに株式の管理を委託せず、自らが「名義株主」となっている場合が多い。投資家連合の中で唯一、カストディアンに預けず自らが名義株主になっていたのは、「友好的物言う株主」とされるタイヨウだけだった。

 マラソンらはカストディアンの説得に苦労した。臨時総会の請求は実質株主の意向であることを明確に表明するなど、様々な条件を受け入れることで、最終的にカストディアンの協力を取り付けたようだ。

 会社側が3月22日に発表した、「株主による臨時株主総会の招集請求に関するお知らせ」には、「NORTHERN TRUST CO.」や「STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY」といったカストディアンの名前が並んでいる。マラソンらの名前が登場しない背景には、こんな事情があった。

 そもそも、臨時総会を請求するには、議決権の3%以上を過去6カ月以上保有していること、といった条件が課せられている。その上、こうした手続き上のハードルの高さから、株式を長期保有することを前提にした機関投資家が株主としての権利を行使するのが容易ではない実態がある。それでも今回、マラソンら英米4社が手を組みハードルを乗り越えて臨時総会を請求したのは、LIXILのガバナンス不全は見過ごせないという強い信念があったからだ。

日経ビジネス2019年6月17日号の特集「正しい 社長の辞めさせ方」では、株主ガバナンスの最新の動向を追った。