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 「計画が暗礁に乗り上げたことがあった」

 LIXILグループのガバナンス問題を巡り、臨時株主総会の招集請求をした英米機関投資家4社連合の1人は打ち明ける。この臨時総会は、会長兼CEO(最高経営責任者)の潮田洋一郎氏と社長兼COO(最高執行責任者)の山梨広一氏の取締役解任を議案としていた。だが、潮田氏が4月18日、5月20日付で取締役を自ら辞任することを発表したため、臨時総会を開催する意義が失われ、英米機関投資家4社連合は招集請求を取り下げている。そして、実はそれ以前にも、この計画は暗礁に乗り上げたことがあった。

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機関投資家のLIXILに対する臨時株主総会の招集請求は簡単ではなかった(写真=ユニフォトプレス)

 英マラソン・アセット・マネジメントのほか、英ポーラー・キャピタル・ホールディングス、米インダス・キャピタル・パートナーズ、米タイヨウ・パシフィック・パートナーズの4社は、LIXILグループの瀬戸欣哉氏が2018年10月末にCEOを解任された経緯に、ガバナンス上の問題があったと判断。臨時総会の共同提案に向けて動いたが、手続きの上で大きなハードルがあった。投資家に代わって有価証券の管理を行う機関、「カストディアン(資産管理信託銀行)」と呼ばれる金融機関の存在だ。

 マラソンら長期の機関投資家は通常、保有する株式の管理をカストディアンに委託している。株主名簿には「名義株主」であるカストディアンの名前が載り、カストディアンに株式の管理を委託した機関投資家は「実質株主」として、株式の保有比率が5%を超えて大量保有報告書が開示されない限り、名前が表に出ることはない。実際、有価証券報告書で開示されているLIXIL大株主の上位には、日本マスタートラスト信託銀行、日本トラスティ・サービス信託銀行、STATE STREET BANKといったカストディアンの名前が並ぶが、米ブラックロックなどの大株主の名前は登場しない。

 機関投資家がカストディアンに株式の管理を任せるのは、煩雑な管理業務をアウトソーシングするためだ。会社側に保有比率を知られて足元を見られたり、競合の機関投資家に株式の保有状況を知られたりする事態も避けることができる。実質株主名が開示されないカストディアンを使う仕組みは、機関投資家にとっても好都合という側面もある。

 だが、この仕組みが今回、マラソンらが株主としての権利を行使する際に「壁」として立ちはだかった。臨時総会の請求のほか、取締役会や指名委員会の議事録開示請求など、株主としての権利行使には様々な種類がある。だが、いずれの場合も名義株主が請求する必要があり、名義株主と実質株主が異なる場合は、両者が協調して動かないと権利を行使することができない。実際、マラソンは2018年12月、議事録の開示を実質株主として請求したが、一度、会社側に「名義株主ではない」ことを理由に門前払いされている。