「プラスと組むと企業価値が毀損する」

 マーキュリアがコクヨを引き込んだのは「今の計画でプラスと組むとぺんてるの企業価値が毀損する」と感じたからだ。そしてコクヨはぺんてるが今後も成長が期待できる中国事業に強みを持つため「一緒に成長できる」と判断した。

 投資ファンドのマーキュリアとしては、いずれやってくる株の売却時に高値で売るためには、ぺんてるの企業価値をできるだけ上げておく必要がある。「プラスがダメとかコクヨがいいとかではない。ぺんてるの企業価値を高めるために何が必要かを考えた結果だ」と今回の判断を説明する。

 経営陣が画策した提携話に筆頭株主がノーを突き付け、代わりの提携先をあてがった。今回の話を一言で言うとこうなるだろう。仮にプラスとの提携が本当にぺんてるにとって利益を生まないのであれば、今回の動きは筆頭株主によるガバナンスが利いた事例となる。

 もちろん、コクヨと組めばぺんてるの企業価値が上がるという保証もない。現経営陣がコクヨに反発している現状ではなおさら、そのハードルは高い。

 ぺんてるは「コクヨと業務提携について協議を行っている事実はない。本件取引が当社との一切の協議なく実行された背景・真意等について確認をさせていただいている状況。いかなる場合においても企業間の関係構築は相互の信頼感が基盤となるべきだ」とコメントしており、現状ではなかなか実のある議論に入ること自体が難しそうな状況だ。

 ぺんてるは2018年3月期の連結売上高が409億円。一方でコクヨは18年12月の連結売上高が3151億円と企業規模では大きな開きがある。独立性を盾に態度を硬化させている和田社長の心の中には、このままだと将来、コクヨに飲み込まれてしまうのではないか、という思いがあるのかもしれない。

 いずれにしろこの事例は、非公開企業も今や株主ガバナンスとは無縁ではいられない、という教訓と同時に、株主ガバナンスを行使した結果、経営陣とのあつれきで企業価値向上どころではない泥沼に陥るリスクもある、という副作用にも気づかせてくれる。ガバナンスは使い道を一歩間違えると、劇薬にもなりかねない、極めてさじ加減の難しい処方箋なのだ。

日経ビジネス2019年6月17日号の特集「正しい 社長の辞めさせ方」では、株主ガバナンスの最新の動向を追った。