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 日経ビジネス6月10日号の特集「知られざる実像 同族経営」では、これまで必ずしもよいものと捉えられていなかった同族企業にアカデミア(学問の世界)が注目している様子を紹介した。米豪で教壇に立つ第一人者、米ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院のジャスティン・クレイグ客員教授は「ファミリービジネスは経営学のメジャーなテーマとして学ぶべき対象になった。『後れた経営形態』といった古い見方は捨ててほしい」と話す。

 米ハーバードや仏インシアード、スイスのIMDといった欧米の有力ビジネススクールも近年、「ファミリービジネス」を学ぶ講座やコースを整えている。創業家がいる利点を整理し、経営への理解を深める内容だ。お家騒動を起こしたり、一族で富を独占したりする負の印象が拭えなかった日本でも研究者は増えている。同族企業には、こうした脆さがある一方で、特有の強みや行動の特徴があることも研究により分かってきている。

親子で移動するカルガモ。ファミリービジネスにも結束が欠かせない(写真:アフロ)

 静岡県立大学の落合康裕准教授らは資産を有効活用して利益に結びつけているかを示すROA(総資産利益率)に着目して上場企業を調査した。2017年3月までの1年間に決算を迎えた企業では、ファミリービジネスは6.6%で、非ファミリーの5.4%を1.2ポイント上回った。16年3月ではファミリービジネスが6.8%で、非ファミリーは5.3%。17年3月までの7期すべてでファミリービジネスが非ファミリーを上回っている。落合准教授は「ファミリービジネスはムダな資産を保有しない傾向にあるようだ」と分析する。

 名古屋商科大学の太宰北斗専任講師の別の調査では、ROAはファミリーの持ち株比率が2割超の会社で特に高い。帝国データバンク総合研究所の分析では、経営者交代の翌年のROAは非ファミリーでは低下するが、ファミリーでは上昇している。

 ファミリー企業がビジネスのうえで形作るネットワークの特徴もデータから裏付けられてきた。京都産業大学の沈政郁教授らが上場企業を対象に執行役員制度の導入状況を調査すると、非ファミリー企業に対して、ファミリー企業に遅れがみられたという。非ファミリーの場合、同じ産業に属する企業で執行役員制度を導入した割合が増えると、後を追うように導入に踏み切る確率が上昇する。ファミリー企業の場合はこうした相関関係がみられないという。

 ファミリー企業では、執行役員制度を導入した別のファミリー企業から派遣された役員がいる場合、新規に制度を導入する確率が上昇する。しかし、非ファミリーではこの相関関係がないという。同業種を気にかけないファミリー企業も、同じファミリービジネスの形態を取る企業の動向を参考にしていることが分かった。

 ファミリー企業同士の結びつきが強い例は、特集「知られざる実像 同族経営」でも紹介した。1999年に森雅彦社長が父親から経営を引き継いだDMG森精機。取引先は多くが町工場で、ファミリー企業が目立つ。

 同社が手がける工作機械は売ってからメンテナンスを提供するため、長い付き合いが続く。「取引先の経営者から『うちの息子をよろしく』、と言われることも多く、同じファミリービジネスとしてベンチマークしてくれている」と森社長は話す。じっくり付き合うファミリー企業同士の関係がビジネスの基盤になっている。