米ネット巨大企業、4社合計の従業員数より多い

 我々は事業構造改革で、雇用を削減しているイメージがあるかもしれませんが、今でも非常に多くの従業員を雇用しています。シーメンスはシーメンスはマイクロソフト、グーグル、フェイスブック、アップルの4社合計の従業員数より多くの従業員を雇用しています。これは時価総額や利益額だけでは測れない会社の価値です。

 投資家は、これだけの従業員数を負荷とみなし、「コンスタントに雇用削減すべきだ」と言うかもしれません。しかし、社会全体を見渡せば違います。我々はリーダーとして、社会の未来を見なければなりません。

一般的には事業構造改革を進めると従業員が削減されたり、異動を迫られたりすることが多くあります。従業員に対してはどのように向き合い、メッセージを発信していますか。

ケーザー氏:従業員とコミュニケーションを取ることをとても大切にしています。工場の人たちと話したり、従業員の背中をたたいたりして激励します。シーメンスは世界中でビジネスを展開し、100以上の国・地域で独自のオペレーションを組んでいます。それぞれの地域に密着し、それぞれのコミュニティーと密につながっています。そして、毎年6億5000万ドル(約715億円)を従業員のトレーニングや教育に充てています。巨額の投資です。我々は従業員が常に働きやすい状態であってほしいのです。

頻繁に事業を切り離したら、その教育費が無駄になりませんか。

ケーザー氏:大切な問いですね。従業員が生涯を通じてシーメンスにいるかは分かりません。人生はいろいろ起こりますから。しかし、従業員には、常に働ける状態で、自分の人生を選択できるようにしていてほしい。できれば働く場所はシーメンスであってほしいと思っていますが、そうでなくても働ける状態であってほしいので教育費は惜しみません。

 「シーメンスはいつも事業を切り分けている」と批判されることがあります。しかし、事業構造の改革によって新たな雇用を創出していることも分かってもらいたいと思います。私たちが事業をスピンオフさせると同時に、新たな会社を作り、新たな雇用を生み出していることも忘れないでほしい。その事業がもっと小さな企業体で運営させた方がいいなら、独立させない理由はありません。

 ビジネスの正否や組織への適合の正否よりも、みんなが一緒にいる方が大切という考えにはくみしません。私はシーメンスに所属するか否かではなく、従業員に選択の幅と機会を提供することが大事だと思っています。

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