ただし、これらはすべて祖業である繊維の技術が出発点です。当社は、このコア技術が生かせること、その技術によって事業間のシナジーが発揮できること、自社の強みが発揮できることを事業展開の原則としています。

 いわゆる「飛び地」の事業を手掛けることはありません。その意味では、当社の経営は多角化による経営資源の最適配分を目的としたポートフォリオマネジメントとは一線を画すものと考えています。

ポートフォリオは目的ではなく、結果だ

 社会的ニーズのある分野、用途に革新的な素材を開発し提供することで成長していくというのが東レのビジネスモデルですが、社会のニーズは時代と共に変化するので、常にその変化をしっかりと読み取って課題を明確にすることが重要です。

 10年先、20年先の社会がどうなっているかを展望し、将来の社会的課題の解決に貢献する素材や技術を提供するために、長期的視点で研究・技術開発に取り組んでいます。それが、幅広い分野、用途に当社の先端材料を供給するというビジネスモデルになっており、ポートフォリオはその結果です。

 当社では「人を基本とする経営」を実践しています。人を変動費と捉えて業績に応じて解雇するのではなく、人は固定費であり人材育成することでレベルアップを図るものであるという点が、欧米型の経営とは異なる日本的経営の特徴でもあり、革新的技術の開発には非常に重要と考えています。すなわち、ポートフォリオ経営の先を行く経営と自負しています。

ポートフォリオ経営のベースとなるガバナンスについては、どのような意見を持っていますか。かねて日覺社長は米国型の株主資本主義に異議を唱えてきました。

日覺:欧米では、一般的に会社は株主の持ち物であり、株主の代表である取締役が経営を行います。短期的な利益の拡大を求められるため、不採算事業の縮小・撤退や従業員の解雇などによって利益を上げ、経営者が莫大な報酬を得るケースがあります。

 株主は、短期的な利益の拡大で上がった株価によって利ざやを稼ぐということが目的で、投資というよりも投機的な考えが中心ではないでしょうか。

 特に米国型の株主資本主義は、今や株主資本主義というより金融資本主義という方が当たっていると思います。短期的な株主利益の極大化を狙ったガバナンス体制のもと、株主利益のみを重要視する経営が求められています。

 一方、日本企業の多くは、たとえ中小企業のオーナーであっても「私財をなげうってでも」という考え方があり、株主だけでなく広く社会に貢献することを目指す考え方があります。東レも、株主だけでなく、従業員、顧客、取引先、周辺地域などあらゆるステークホルダーに利益をもたらすことを目的に事業運営を行っています。

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