では、ベンチャーキャピタルとして20年間の実績と知見を持つ御社が「投資したくなる事業」とは、どういうものでしょうか。

瀧口:大きく2つあります。1つは「その技術が非常に優れていて、かつ、市場性があること」です。大学の中には惚れ惚れするような技術がいっぱいありますが、ファンド会社としてビジネスをやっていく場合、その市場があるかどうかがすごく重要です。

 さらに、その市場の違いによって、必要となる条件が変わります。市場がすでにある場合、「既存のものより効率が2割よくなります」というのは、大学の論文としては素晴らしい技術ですが、ビジネスには足りない。既存のものに100の効果があったとき、新しい技術は200とか300という効果があって初めて、既存の技術と代替していくものなのです。

 その技術で新しい市場をつくる場合は、我々がきちんと「仮説を持ったストーリー」を描けるかどうかが重要です。投資しているある企業の場合、12~13年前、紙切れ1枚のアイデアを持ってきて「これ、儲かります」と言われました。

 当時は誰もお金を出してくれなかったのですが、我々は「データを集めて、それを人工知能で解析したら、出てきたデータが価値を生む」という仮説をきちんと描けました。2018年、その会社は東証マザーズに上場しました。株式公開日、我々の株式の保有比率は45%でした。

もう1つの条件は何でしょうか。

瀧口:「人」です。「この人、もしくは、このチームと一緒にやってみたいな」と思うかどうかです。

 我々がいつも気にしてみていることが1つあります。「粘り強くやり続ける力があるかどうか」です。性格が明るいか暗いか、ピアスしているか、茶髪か、そんな外見は関係ありません。我々が約束としてお金を出したとき、経営者と株主はパートナーになるわけですから、きちんと一緒にやり続けることができるかどうか、これが資質として一番重視したいところです。

 2、3回会っただけではわかりません。ごく一例ですが、例えば小学生からずっと空手をやっているとか、ジョギングしているとか、ずっとやり続けることがあるかどうかなどを聞いてみます。そういう人は、好きな仕事であれば、失敗してもあきらめず、粘り強くやり続けることできるかもしれません。

それらの経験や知見をもとに、企業が生み出して別会社化するようなスピンアウト型の新規事業についてもお話をうかがいたいと思います。新規事業を成功させるために、最も重要なポイントとはなんでしょうか。

瀧口:新規事業なのか、新商品開発なのか、明確に定義することです。新規事業の立ち上げを模索している企業の中には、この2つを混同しているところが非常に多いのです。

 新規事業で既存の延長線上のものをやっても、それはただの新商品開発で、スピンアウトしたベンチャーでやる意味がない。親会社や関連会社の経営資源を活用して、まったく新しい市場に参入していくこと、これがスピンアウト型の新規事業の基本的な考え方です。

 その新規事業を成功させるためには、親会社の経営者もしくは責任者がロングタームでコミットメントをきちんととれるかどうかが、重要です。逆に、スピンアウトで新規事業を始めた方々は、そのコミットメントを維持できるように、きちんとレポートしていくこと、関係を構築していくことが求められると思います。

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 新規事業開発を指示しているが、なかなかうまく立ち上がらない、簡単そうに思えたが、やってみると難しいと感じている経営者や事業責任者は多くいます。

 誰もが思いつくアイデアしか出てこない、話題になっている分野に取り組むが収益性が上がらない、リソースをどの程度投入すればよいのか、外部との連携をどのようにとるのかなど実際に活動をする中で、難しさを知ることが多いと思われます。

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