大学で生まれたキラリと光る技術を事業化し、社会に役立つものとするため、立ち上げ間もないベンチャーを中心に投資しているベンチャーキャピタルが、1998年に設立された「ウエルインベストメント」だ。
代表取締役社長の瀧口匡氏は早稲田大学の客員教授で、日本ベンチャー学会の理事も務める。早稲田大学、東京大学、京都大学、スタンフォード大学など国内外の大学発の優れた技術を見いだし、投資して事業化してきた。瀧口氏からみた「投資したくなるベンチャー」の条件とは何か。同社の20年間の実績と知見をもとにした「新規事業を成功させるポイント」とともに聞いた。
(聞き手は谷口徹也=日経BP経営メディア局長補佐)
まずは、大学発の技術やサービスをメーンに投資する「ウエルインベストメント」の成り立ちについてお聞かせください。

瀧口:バブルの崩壊で日本に元気がなかった1993年、研究者と一部の企業が一緒になって、起業家をサポートして日本を元気にしようと「早稲田大学アントレプレヌール研究会(Waseda Entrepreneurial Research Unit:WERU)」を立ち上げました。当時は、早稲田大学の関係者や学生がつくった会社をサポートする感じで、大学発の技術の活用などという発想はありませんでした。
1998年、大学等技術移転促進法(TLO法)が5月に制定され、8月から施行された頃から「大学の技術を活用する」という大学ベンチャーの動きが始まりました。同年6月、WERUのメンバーを中心に「ウエルインベストメント」を設立したのです。
いま、何社のベンチャーに、どれくらい出資されていますか。
瀧口:対象を絞り込んで深くご一緒するのが我々の投資のやり方なので、社数は多くありません。トータルでおよそ30社、そのうち深く関わっているのは12社程度です。ファンドの総額は170億円くらいでしょうか。
まだ事業化の具体的な道筋が見えない段階から出資して深く関わるということは、成功すればリターンも大きいですが、失敗のリスクも大きくなります。新しい技術に対する相当な「目利き」が要求されますね。
瀧口:当社では、3つの視点からベンチャーの技術案件を発掘しています。1つは「世界の産業の動向」です。常に1人か2人は世界を回り、情報を収集しています。2つめは「スタートアップの状況」です。あるベンチャー企業と開発したデータベースで、世界のスタートアップのデータを60万件持っています。そして、3つめは「国内外の大学の技術動向」です。
これら3つの視点から「世界の技術ベンチャーがどちらの方向を向いているか」を絶えずみています。これらがウエルインベストメントの心臓部で、ここから出てくる仮説に、NEDOや経済産業省や文部科学省の補助金で使えるものは使い、我々が民間ファンドで出資して、事業化まで持っていきます。
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