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ディープラーニングを活用したキヤノンの医療機器

 AI(人工知能)の導入が進まない理由の1つに、「責任の所在がはっきりしない」という点がある。工場の自動検査ロボットが品質不良を見逃したらどの部門が責任を持つのか。自動運転車が事故を起こしたらドライバーの過失になるのか。判断を下したAIに責任を取らせるわけにはいかない。ステークホルダーの間で、責任のあり方についてコンセンサスを得ておかなければ導入は難しい。

 その意味では人間の命に直結する医療分野でのAI活用は難しそうに思えるが、現実はその逆だ。法律により医師が最終的な診断を下すことが決まっているため責任の所在が明確で、深層学習(ディープラーニング)の技術などを活用した機器の導入が進んでいる。

 ディープラーニング技術を活用した医療機器の一例が、キヤノンが眼科領域で2019年4月に製品化した「OCT-A1」だ。画像のノイズを低減する技術と高性能GPU(画像処理半導体)によって、眼底の3次元画像から血管の形態を描出する検査時間を大幅に短縮できる。

 眼科医にとって、糖尿病網膜症などの診断は大きな負担となっていた。患者が高齢者の場合、網膜の眼底画像は1回の撮影では鮮明なものは得られないことが多く、何度も撮り直すといったことが必要になるためだ。

 キヤノンが開発した機器ではディープラーニングの技術を活用して画像のノイズを減らし、鮮明な画像を映し出してくれるので検査時間が大幅に短縮された。