デジタルの力で様々な交通手段を連携させて、移動の利便性を高める「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」が注目されている。海外での普及が進む中、国内でも取り組みが始まっているという。実態を探るため、国内のMaaS先進地に向かった。
電車、バスに加え、シェアサイクルも
九州最大の都市・福岡市。日本最大級のバス保有台数を誇る西日本鉄道のお膝元とあって、街中では路線バスが絶え間なく発着を繰り返す。ここでは、その西鉄とトヨタ自動車が手を組んで、様々な移動手段を組み合わせたルート検索ができるアプリ「マイルート」の実証実験を2018年11月から始めている。

使い方はいたってシンプルだ。アプリを起動し、目的地を入力すると「到着が早い」「料金が安い」「乗り換えが少ない」の項目ごとに候補が表示される。ここまでは従来の乗り換えアプリと大差はないが、マイルートでは路線バスや電車に加え、シェアサイクルやレンタカーを使ったルートも表示される。
例えば、福岡市北東部にあるJR箱崎駅から約7キロ離れた城南区役所を目指すとする。「到着が早い」で初めに出てくるのはタクシーを利用する23分のルートだったが、画面をスクロールすると「JR鹿児島本線区間快速→福岡市地下鉄空港線→徒歩→サイクルシェア→徒歩」という乗り換えが表示されていた。このサイクルシェアというのはフリーマーケットアプリのメルカリグループが18年2月から福岡市で始めたシェアサイクルサービス「メルチャリ」で、市内の至るところに赤いメルチャリが置かれた「ポート」がある。

このルートで画面上の「ガイド開始」を押すと地図での案内が始まり、利用者はそれに従って乗り換えを進めていけば目的地にたどり着くことができる。かかる時間は箱崎駅出発から50分余り。時間だけを見るとタクシーの倍以上で手間もかかるが、移動費用はアプリ上では6分の1に抑えることができる。
マイルートでは西鉄バスのフリー乗車券の購入やタクシーの予約・決済もできる。これが様々な移動サービスを統合するMaaSの肝。移動ルートの検索だけでなく、予約・決済までできれば、利便性は高い。ただ、マイルートでは電車やバスの支払いをすることは「現在はできない」(西鉄未来モビリティ部企画開発課・日高悟課長)。MaaSとして普及させるには、さらなるサービス向上が課題になる。
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