日本の給与は特殊な旧来型 パーソル総合研究所の佐々木聡コンサルティング事業本部長

<span class="fontBold">佐々木聡(ささき・さとし)</span><br />慶応義塾大学大学院経営管理研究科修了。リクルートやヘイ コンサルティング グループ(現コーン・フェリー)などを経て、2013年より現職。リーダーシップ開発などが専門。
佐々木聡(ささき・さとし)
慶応義塾大学大学院経営管理研究科修了。リクルートやヘイ コンサルティング グループ(現コーン・フェリー)などを経て、2013年より現職。リーダーシップ開発などが専門。

 世界的にみても日本だけで特殊な給与制度が成り立っている。戦後日本の給与制度における3種の神器は「終身雇用」「年功序列」「労働組合」。これらが長い間、うまく機能していたことで「1つの会社に属して生きる」という一体感が社内にできていた。日本では「ものづくり」が盛んであったこともあり、職人や技能者が経験を重ねるほどスキルが上がり、昇給もするという「職能型」の給与制度が運用されていた。

 本来は仕事の熟練度で賃金を上げるべきだったのだが、実態としては能力の判断は難しいので結果的に年功序列となっていた。役職定年でポストを外すということはあったが、基本的には給与は右肩上がり。それが日本の給与制度を支えていた。しかし、3種の神器の力はバブル崩壊後に弱くなってしまった。失われた20年あるいは30年を経ても、給与制度は旧来型のままだ。

 職能給が基本の日本と比べ、海外は仕事そのものへの給与が支払われる職務給が基本となっている。年齢と関係なく、ポストの重さや仕事の内容で給与を決める。職務給を取り入れている国内企業は少ないが、百貨店業界では大手がバブル崩壊後に職務給に移行した。百貨店の仕事は配置されたポジションごとの役割が明確なため、職務給を導入しやすかったからだ。ただ、いったん制度を整えた後、仕事の難易度や定義を見直さず、放置していることが多い。時代の流れに沿った運用ができていないようだ。

 これまで日本企業は会社の中だけの基準で昇進・昇格を決めていた。仮に海外から優秀な人材を採用しても、人事・給与制度がリアルタイムの市場価値や将来性まで見越していないことが多いから、「もっと自分を高く買ってくれる企業に移りたい」と考えて、すぐに辞めてしまうケースもある。

 グローバル化が避けられない現代では、社員の市場価値を基準にした給与制度にならざるを得ないだろう。職務型での適切な運用が求められる。日本の給与制度は「中(社内)と過去」を見る制度。「(社)外と未来」も組み合わせていく必要がある。

日経ビジネス特集「強くなれる給料」(4月22日号)の記事もご覧ください

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