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 給与制度は時代に合わせて変わっていくものだろう。日経ビジネス4月22日号の特集「強くなれる給料」では社員のやる気を引き出そうと奮闘する企業の動きを取り上げた。その仕組みや運用、考え方次第で会社の命運さえも変えてしまうほど大切なものだから、一からつくるとなると困難も伴う。過去のしがらみがないスタートアップはどうやって給与制度を整えているのだろうか。

 「万能な制度など存在しない。設計に固執するのでなく、運用で柔軟にカバーすることが大切だ」。2008年設立でスマホゲームのイラスト制作代理などを手掛けるサーチフィールド(東京・品川)の中山直人社長は話す。

中山社長は「将来的には社員が自分で定めた目標に伴う給与を決めて、達成度に応じて受け取れるようにしたい」と話す

 現在は職能等級制と呼ぶ仕組みを採用している。管理職のマネジメント、営業などの総合職、イラスト監修の専門職、事務を担当する一般職の4職種で、それぞれ2~4つの等級と半期ごとの評価を組み合わせて支給額を決める。「一時的な成果によって報酬が決まるのではなく、能力によって段階的な報酬となる設定で、社員の成長を継続させられるようにしている」(長谷川洵副社長)という。

 評価は目標の達成度合いなどにより7ランクに分ける。社員の頑張りに報いることを基本的な考え方にしており、同じ等級の社員でも4割から最大2倍の給与差がつく。

 社員数は49人。「今の給与制度に落ち着くまでは紆余(うよ)曲折があった」と長谷川副社長は振り返る。中山氏や長谷川氏を含む5人で創業した当時はイラストを多く取り入れた新卒用求人サイトの制作に乗り出す考えだった。リーマン・ショックのさなかでビジネスが成り立たず、「最初の1年間は資本金を切り崩すような状況でほぼ無給だった」(長谷川氏)。

 イラスト制作の過程で外部のイラストレーターとの関係が深まり、広告代理店にイラストを供給するビジネスに切り替えた。これで危機を脱し、2年目に売り上げを年間数千万円にまで伸ばして、5人の給与を一律で月額20万円にしたという。

 スマートフォンの普及とともに11年ごろからソーシャルゲームのブームが到来した。ソフトメーカーにイラストレーターのコンテンツを供給して売上高が3億1500万円、営業利益4000万円以上にまで成長し、初めて社員を中途で採用した。賃金は能力よりも前職の給与をベースに設定し、この年は5人が入社した。このころは社員の給与を評価にかかわりなく、一律で月10万円ほど引き上げるという「どんぶり勘定」(長谷川氏)だった。

副社長が独学で仕組みづくり

 しかし、その後に減益に転じ、以前のように大幅に給与を引き上げられなくなったという。前職の給与をベースに賃金を決めていたこともあり、能力と支給額が一致しない問題も顕在化し始めた。社員からは「どうすれば給料が上がるのか」という不満の声も上がっていた。

長谷川副社長は独学で制度をつくり、後にコンサルを入れて現在の仕組みにつなげた