大手通信機器メーカーを脅かす

一般論ですが、大量のデータを高速に処理する必要があるケースでは、専用のICチップを載せた機器のほうが有利といわれています。都心部のように通信の混雑が非常に激しく、スマホと基地局で膨大なデータを送り合う場で、通信処理に特化していない汎用的なサーバーを使う楽天の基地局は十分な性能を発揮できるのでしょうか。

アミン氏:通信の混雑やデータ伝送容量の問題は周波数など様々な要素が絡んでおり、装置が専用か汎用かといった単純な対比で議論すべきではないでしょう。それに、当社が導入するサーバーは通常のCPUを載せた汎用的な製品とはいささか異なっています。あまり知られていないことですが、実は米インテルとの協業に基づいて設計開発した「ハードウエア・アクセラレーター」を実装しているのです。

 それによって性能は専用チップを使う従来の通信機器に遜色なく、大容量のデータ通信にも十分対応できるようになります。「専用か汎用か」という議論が生じる背景には、どちらが技術的に優れているかというよりも、既存の大手通信機器メーカーのビジネスモデルを脅かす可能性があるからではないか、と思っています。そして大手メーカーのそんな懸念を楽天は現実のものにしようとしているわけです。

総務省が4月10日、5Gサービスに必要な電波をNTTドコモとKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの計4社に割り当てました。

アミン氏:非常に感慨深いものがあります。私がインドの大手携帯電話会社であるリライアンス・ジオ・インフォコムから楽天グループに転じたのは2018年6月のことです。当時、通信業界では「楽天に通信インフラが作れるものか」といった懐疑的な見方が大勢を占めていました。

 そんな当社が総務省から5Gの電波を割り当てられ、対応サービスを正式に展開できるようになりました。晴れて「5Gを手掛ける通信会社として十分な力がある」と認めてもらえたわけです。当社は常に、将来の5G導入を念頭に置いて通信インフラを構築してきました。5Gそのものは2020年6月から始めますが、それに先立つ携帯電話事業参入の初日から「5Gレディ」の通信インフラになっているわけです。

5Gが世界にもたらすインパクトをどう想像していますか。

アミン氏:新しく革新的な技術が真の意味で人々の生活に寄与していくと信じていますし、とてもワクワクしています。高速・大容量で低遅延というだけでなく、多数の通信機器を同時接続できるようになることで、IoT(モノのインターネット)をより有効な形で活用できるのが5Gの真価と言えます。

 コネクテッドカー(つながるクルマ)やホームオートメーションといったIoTの様々なアプリケーションはこれまでにもありましたが、そのメリットを都市部だけでなく地方も含めていきわたらせるのは、4Gでは難しかった。5Gになれば、そうしたことが実現可能になります。壮大な社会の変容をもたらすのが5Gで、それを日本が先頭に立って実現し、新しい健全なエコシステムを構築して他国をリードしていく。そんなチャンスが広がっているように思うのです。

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