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 ひとくちに「起業」といっても、その実態は様々。人生をかけた大博打となるケースももちろんあるが、副業のように小さく始められる事業も数多くある。日経ビジネス4月8日号「起業、失敗の後」では、低コストで始められ、失敗しても比較的傷の浅い事業として、PC一台でできるウェブサイト制作や並行輸入などネット系ビジネスを取り上げている。そうした起業で失敗した人々は、借金を背負ってもその額は200~300万円程度。自己破産に至るケースは少ないようだ。

 しかし、こうした低コスト起業家の中にも、1000万円近い負債を抱えて倒産し、多額の借金を負う人がいないわけではない。初見俊彦氏(31歳)は、そんな失敗を間近に見た経験を持つ一人だ。

低コスト起業で1000万円の負債

 2015年、ある会社が倒産した。設立は14年で、事業内容は輸入販売、ネット通販サイト構築、小規模のシステム開発と、低コストで始められるものばかり。初見氏は代表取締役となる友人のA氏と二人でこの会社を創業し、一般社員として働いていた。創業資金は200万円ほどだが、たった1年間で負債総額はおよそ1000万円にまで膨れ上がっていた。

 学生時代から街コン運営やプリザーブドフラワーのレンタル、ウェブサイト構築などいくつかの事業立ち上げを経験していた初見氏は、26歳だった14年、先輩からA氏を紹介された。当時23歳のA氏は、16歳ごろから様々なスモールビジネスを手がけてきた経歴の持ち主。当時は中国在住の友人たちと、中国から服を仕入れてネット通販サイトで販売する個人輸入ビジネスを営んでいた。

 A氏は、事業拡大のためにSEO(検索エンジン最適化)などの技術が必要だと考え、初見氏に共同創業を持ちかける。「手伝うのはやぶさかでないが、どこか怪しい」と感じた初見氏は、共同代表ではなく従業員という立場で参加することにした。日本政策金融公庫から200万円の融資を受け、オフィスを借りて事業を開始。その後1カ月ほどでアルバイトも雇用する。

 当初の事業は衣料品や携帯電話といった輸入商材の販売。A氏がもともと運営していたネット通販サイトを引き継ぐ形だ。月商は60~80万円ほどで、初見氏も20万円強の給与を得ることができた。しかし、輸入ビジネスは流行や季節に大きく左右される。想定よりも事業は伸び悩み、在庫を過剰に抱えた状態になってしまった。