提供:大塚製薬
私たちの健康維持に不可欠な、免疫機能。近年、ウイルスなど感染症を引き起こす病原体の侵入口となる鼻や口、喉に備わる「粘膜免疫」の働きに注目が集まっている。この粘膜に関して新たなワクチン開発という視点で研究を行うのが三重大学大学院医学系研究科の野阪哲哉教授。一方、乳酸菌などの食品成分を用いた粘膜免疫維持の可能性を探るのが大塚製薬大津栄養製品研究所の甲田哲之所長だ。そんなお二人に、今、私たちが粘膜免疫を高めるための秘策について聞いた。
今こそ知っておきたい「粘膜免疫」
病原体は鼻や口から体内に侵入する

西沢邦浩研究員(以下、西沢):今回は「免疫最前線」というテーマのもと、ともに「粘膜免疫」という分野で研究を行われている野阪先生と甲田所長にお話を伺います。野阪先生は鼻から噴霧する経鼻ワクチン開発を、甲田所長は食品成分の粘膜免疫への作用と、お二人とも粘膜における免疫研究に注力されています。まず、免疫とは何か、そして粘膜免疫とはどういった働きを持つものなのかを教えてください。
野阪哲哉教授(以下、野阪):風邪などの感染症の原因になる病原体の侵入を阻み、万が一感染したとしても体の中で戦い、排除するのが「免疫」という仕組みです。ウイルスの侵入口となるのが、鼻や喉の表面を覆う粘膜。多くのウイルスは粘膜にくっつくとおよそ10~20分で粘膜の細胞の中に完全に入り込みます。
西沢:だからこそ、感染を防ぐには、ウイルスの最初の感染場所となる「粘膜」という最前線の砦で、侵入を阻む粘膜免疫が重要になるわけですね。甲田所長は約20年前から粘膜免疫に着目し研究を行われてきましたが、研究テーマを始めるきっかけはあったのですか。
甲田哲之所長(以下、甲田):私どもは腸と栄養という視点で健康に寄与する新たな食品の研究開発を始めました。当時多くの研究はNK細胞の活性など、体内に病原体が侵入した後の排除機構である「全身免疫」に注目するものでした。もちろん全身免疫も重要です。しかし、手洗いやマスクをするように、まず病原体の侵入を防ぐため、粘膜免疫を高めることがさらに重要なのではないかと考え、唾液中のIgA分泌量という免疫指標を元に研究を行ってきました。
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