普段から社外の情報をキャッチし、予断なく受け止める

海外の企業はどうなのでしょうか。

内田:事例で見ると、国内、海外で大きな違いはありません。会社組織は平時対応が99%で、それに合わせて組織もルールも決まっています。ですから、クライシスが起きた時のルールや対策をあらかじめ決めておいたとしても、対応が難しいのです。ただ海外企業には会社や経営者を助けるプロフェッショナルが存在し、社外に頼むことへのアレルギーがありません。何か事が起これば、対策チームをつくり、一気に対応します。それに対して日本企業は社内で対応しようということになってしまいがちです。

企業のクライシス対応力はどのようにして測ればよいのでしょうか。

内田:対応力は、「リスク管理成熟度」「緊急・非定型対応力」「情報の客観的・包括的把握力」「ビジネス基盤の複雑性・リスク度合い」の4つで測ります。1つ目の「リスク管理成熟度」は多くの企業で実施されているリスク管理対策の評価です。2つ目の「緊急・非定型対応力」は有事でのアドリブ対応がどの程度できるかというところで、平時のオペレーションの巧拙とは必ずしも相関しません。むしろ平時のオペレーションがきっちりしている企業ほど、いざという時に部門の壁を越えた対応がうまくなかったりします。ここでは部門横断的な活動ができることや、経営陣と現場の距離が近く、情報格差が少ないこと、意思決定が早く、一度決めても軌道修正できることが重要になります。3つ目の「情報の客観的・包括的把握力」は、日常的に顧客・サプライヤー・株主などからのフィードバックへのアンテナを張れているかどうかだけでなく、法律・会計専門家・コンサルタントなどプロフェッショナルとの接点を持ち意見交換ができているかどうかです。4つ目の「ビジネス基盤の複雑性・リスク度合い」はサプライチェーンの階層の深さやグローバル化のレベルです。

(左)ボストン コンサルティング グループ<br />マネージング・ディレクター&パートナー 田中 玲氏<br />(右)ボストン コンサルティング グループ<br />プリンシパル 田中 基興氏
(左)ボストン コンサルティング グループ
マネージング・ディレクター&パートナー 田中 玲氏
(右)ボストン コンサルティング グループ
プリンシパル 田中 基興氏

田中玲:クライシス対応では難しいバランスの取り方が求められます。信頼関係に裏打ちされた組織の風通しの良さが必要な一方で、組織の中だけに閉じるとムラ社会になってしまって、社外との関係をつくる意識が希薄になり、結果的に判断を誤る可能性が高まります。

田中基:インシデント発生時の混乱はどこの会社も同じです。起こりがちなのは声の大きい人や一部のステークホルダーの判断に全体が流されてしまうことです。その結果、普段はバランスの取れた判断をしている企業であっても、有事には世間からするとおかしな判断になってしまうことがあります。そのミスが炎上の原因になってしまうため、普段から社外からの情報をキャッチし、それをバイアスなく受け止めることが重要です。それができれば、万一インシデントが起きても、世間から見て違和感のある対応をすることはなく、炎上を抑えることができます。

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