提供:ボストン コンサルティング グループ

想定外のインシデントは、いまや企業経営にとって無視できない存在となっている。企業の不祥事はインターネットやSNSを介して一気に拡散され、自社の信頼やブランド、さらには株価にまで大きな影響を与える。インシデントが発生したとき、クライシスマネジメントとはどうあるべきか。ボストン コンサルティング グループ(BCG)の内田康介氏、田中玲氏、田中基興氏に同社での取り組みを聞いた。

インシデント発生から100時間の初動対応が成否を決める

いま、なぜクライシスマネジメントが必要とされるのでしょうか。

内田:企業を取り巻く環境のなかで、製造品質や不正経理、コンプライアンス違反、サイバー攻撃、情報漏えいなどクライシスの種類が増え、複雑化しています(図)。またサプライチェーンがグローバル化し、企業によってはサプライヤーの数が増え階層も深くなっており、すべてを把握することが難しくなっています。さらに、インターネットで個人が瞬時に情報を受発信できるようになったことで、不祥事は一気に拡散され、それが企業への信頼や株価に大きな影響を与えています。企業は予防策としてのリスクマネジメント、新しいシステムの導入などの努力をしていますが、突発的なクライシスを完全に防ぐことは難しい。そこで、法的、社会通念的な疑義が発端で、突発的に発生し、企業の存続や企業価値に甚大な影響をもたらすクライシスに迅速かつ適切に対応することが求められています。想定されるリスクを減じるリスクマネジメントに対し、突発的に発生してしまった危機に対応するのがクライシスマネジメントですが、その重要性が増しているのです。

いま、企業が直面するクライシス<br />出典:ボストン コンサルティング グループ
いま、企業が直面するクライシス
出典:ボストン コンサルティング グループ
ボストン コンサルティング グループ<br />マネージング・ディレクター&パートナー<br />内田 康介氏
ボストン コンサルティング グループ
マネージング・ディレクター&パートナー
内田 康介氏

田中玲:クライシスにも様々な種類があります。かつては存在しても表面化しなかったものもあったかもしれませんが、インターネットやSNSなどで情報格差がなくなり、表に出てきているという面もあります。

田中基:かつてであれば、特にB2B企業では問題が起きても当事者間の話し合いで解決することができた場合もありました。ところが今はSNSで短期間のうちに問題が拡散していきます。そこで、いかに早く状況をマネジメントするかというクライシスマネジメントが重要になっているのです。

日本企業ではクライシスマネジメントはどの程度認識されているのでしょうか。

内田:多くの企業では平時の予防策という点でのリスクマネジメントは実施しています。ただ突発的なインシデントに対応するクライシスマネジメントは意識されていないか、平時の対策の延長線上で解決できると考えられているのが実情です。クライシスマネジメントでは特にインシデントが起きてから最初の100時間の対応が重要なのですが、初動を間違えて“地雷”を踏んでしまい、炎上が一気に広がるケースが多くあります。

B2B企業も意識しなければいけないのでしょうか。

田中基:B2B企業も例外ではありません。ESGに対する問題意識の高まりもあり、企業は使っている素材の材料や生産地、生産の仕方などを社会に広く説明することが求められるようになっているからです。問題が起きると、その対応のために多くの企業は短期間で世論の納得を得ようと、社長辞任のような強い収束策を選びがちです。しかし、それで事態が収束するとは限りません。外部からの批判が長引いてしまう、後追いの説明で再炎上してしまう、といったことでダメージはさらに深刻なものになります。

田中玲:いままでのステークホルダーマネジメントでは、株主、顧客、調達先と関係先が限られていて、世論や世間は対象外でした。ところが、気候変動の問題が典型的ですが、ESGで様々な団体やアクティビストが声を上げるようになり、市民ひとりひとりの声が大きな影響を及ぼす状況になっています。それに対しては経営者だけでなく、会社全体で対策を立てる必要が出てきています。

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