提供:ベイカレント・コンサルティング

なぜ日本企業はDXにつまずくのか? 「既存のビジネスモデルは長年に渡る改善活動で磨かれてきた。これをデジタルでさらに磨き上げるには限界がある」と要因の1つを挙げるのは、ベイカレント・コンサルティングの小峰弘雅氏。その真意とは? 同社のキーパーソンから背景を掘り下げたインタビューの内容をお届けする。

停電から考える、日本のDXが進まない理由

前々回 は企業戦略、前回は事業戦略の1つであるマーケティングとDXの関係について伺いました。今回もテーマは同じく事業戦略で、ビジネスモデルとDXにフォーカスしたお話を伺いたいと思います。まずはDX時代のビジネスモデルにおいて、日本企業はいかなる問題に直面しているのか、考えをお聞かせください。

小峰氏:これまで日本企業は優れた改善活動によって、生産性や品質を向上させてきました。しかしそうして磨かれた既存のビジネスモデルには、デジタルが入り込む隙がないように見受けられます。例えば停電が頻発する海外では、DXによって電力の安定供給を実現するというケースがあります。では、停電がほとんど起こらない日本ではどうでしょうか? 停電が発生しないのは、インフラ設備の品質を磨いてきた結果です。しかし大きな問題がないからこそ、DXへのモチベーションが弱いともいえる。既存のビジネスモデルだけをデジタルで研ぎ澄ますことには、限界があると感じます。

小峰 弘雅 氏
小峰 弘雅 氏
ベイカレント・コンサルティング ベイカレント・インスティテュート

そのことがDXに取り組む多くの日本企業にとって、思ったような成果が出ない要因になっているわけですね。

小峰氏:その通りです。

では、どうすればよいのでしょうか?

小峰氏:まず理解しておくべきは、「顧客価値」「利益方程式」「主要プロセス」「経営資源」という4つの要素から、ビジネスモデルは成り立っているということです(図1)。ただしそれらを磨くことだけを考えていると、先にお話しした通りデジタルの入り込む余地は限られます。もう少し、広い視野で捉えることが必要です。

ビジネスモデルを構成する4つの要素(図1)
ビジネスモデルを構成する4つの要素(図1)
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広い視野といいますと、具体的には何をすべきでしょうか。

小峰氏:図2に示したように、異なるビジネスモデル同士を経営資源の1つであるデータでつなげることで、既存の顧客価値を新たな顧客価値に昇華させるのです。各々のビジネスモデルはそのままに、データだけをつなぐところがポイントです。ちなみにこのような取り組みを、ビジネスモデルの名著で知られるホワイトスペース戦略にちなんで、「マルチスペース戦略」と弊社では呼んでいます。

マルチスペース戦略(図2)
マルチスペース戦略(図2)
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