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提供:リクルート

シニア人材は、不足するマンパワーを補うためだけの存在ではない。その経験を生かし、社員を引っ張ってもらうことが、企業の成長を促す大きな力になる。実例を紹介していく。

右から中央建設株式会社 代表取締役 渡部功治氏、同社 専務取締役 川原純一氏

単なる人手不足解消ではなく、成長の担い手としての期待が高まる

 企業のシニア人材ニーズが高まっている。2019年3月にリクルートから発表された「定年前後の転職者の採用・受け入れ実態調査」によると、定年前後(55~64歳)の人材を採用したことがある企業の採用担当者の約6割が、「今後も採用意向あり」と回答。定年後の転職者が周囲へもたらす効果としては、「新しい知識や物の見方を得られた」「周囲のメンバーのスキルアップにつながっている」などの回答も見られた。

 少子・高齢化による生産年齢人口の減少とともに、不足するマンパワーを補うためシニア人材を採用する動きが徐々に広がってきた。

 しかし、この調査結果からは、単なる人手不足解消にとどまらず、シニア人材の知恵や経験、人脈などを積極的に活用して、企業の成長に結びつけたいという新たな人材ニーズが高まっていることが読み取れる。

 では、そうした企業は実際どのようにシニア人材を活用しているのか。また、シニア人材はいかに企業で活躍しているのか。昨今、特にシニア採用に積極的な、建設業界での実際のケースを見てみよう。

 中央建設株式会社は、東京都港区に本社を構える総合建設会社だ。社員数は100名余り。企業規模ではスーパーゼネコンや準大手に引けを取るものの、手掛けている案件は公共施設やオフィスビル、商業施設、マンションなど幅広い。

 「ひと言で言えば、“スーパーゼネコンのミニチュア版”です。身の丈は小さくとも、様々な案件を手掛けることでリスクヘッジをしつつ、成長の種を増やしていきたい。そして実現のための戦略として必要なのがシニアという人材なのです」と、同社 代表取締役の渡部功治氏は語る。

中央建設株式会社
代表取締役
渡部 功治氏

年齢の垣根を取り払い、多様な経験を持った人材を採用

 今年で創立70周年を迎える同社は、もともと愛媛県今治市に本社を構えていた。地元では、入札に参加できる企業規模が大きい“Aクラス”の建設会社だったが、「公共工事の減少や慢性的な人手不足によって、地方にいてはいずれじり貧になるという危機感を抱いていました。一念発起して2012年に港区に本社を開設し、再出発することにしたのです」(渡部氏)。

 当初、今治から東京へ進出してきたのは渡部氏たった1人。文字通りゼロからのスタートである。最初の2年間は事務所も持てず、人集めも営業も、すべて渡部氏が駆け回った。

 言うまでもなく、建設は「人ありき」である。現場を管理する技術者がいなければ、仕事は請け負えない。5人、10人と社員を増やしながら、仕事の幅を広げていった。

 「私が代表取締役に就任すると同時にただ人を増やすのではなく、リスクヘッジと成長の種づくりを常に念頭に置きながら、この仕事を取るためにはどのような人材が必要なのかを考え、パズルのピースを埋めるように人材を集めてきました。多様な人材を求めているのですから、年齢の壁を設けるつもりは一切ありません。また、優秀な人材や、弊社の成長に必要な人材にはできるだけ長く働いてほしい。だから、70歳を定年とし、それまでは給料も下げないという制度をつくりました」(渡部氏)

 一般のサラリーマンは“役職定年”を迎える60歳で給与が大きく下がり、65歳で定年退職となるが、これを大きく変えることで、人材採用の間口を広げ、定着を促そうとしたのだ。「実際、弊社の施工管理技術者(現場の責任者)の中には、74歳で活躍している方もいます。経験やノウハウを持ち、いくつになっても『働き続けたい』という意欲を持っておられる方から仕事を奪うことはありません。シニアの方々に輝き続けていただくことが、会社の成長にもつながるのですから」と渡部氏は語る。

 同社は、「テーマは人 そして全ては未来へ…」というキャッチフレーズを掲げている。「人こそが経済すべての源であり、宝であり、会社の利益や存続を支える力である」という渡部氏のポリシーが反映された言葉だ。

 シニア人材や現役人材という垣根を設けることなく、社員と会社の未来のために採用の門戸を開いてきたことが、現在、社員数100名余りという着実な成長に結びついたのであろう。