全3707文字

 こうした研修の充実はビジネス環境の変化にもマッチしていた。従来は扱う主な商品が業務用の電話機や複合機で、「ある程度は商品のスペックや価格戦略でも売り込めた」(前原担当課長)。が、需要が一巡したあとは売り上げが徐々に減少。新たにネットワークセキュリティー関連の機器なども扱い始めたが、必要性がわかりやすい電話機や複合機と違って思うように売れずにいたのだ。

 セキュリティー対策の商品は、単に性能や価格を伝えてもなかなか売れない。商品を導入する重要性について事例を交えながら伝えたり、企業の課題を聞き取りながら商品のメリットを伝えたりといった営業テクニックが重要になっていた。もちろん、ベテランの中にこうしたテクニックを実践する営業担当者はいた。が、そのテクニックを若手に教えるのに苦労していた。

 動画を使ったロールプレイや集合研修などを通じ、話題の振り方や視線誘導、顧客の課題を聞き出す方法などを細かく指導すると、一部のベテラン営業担当者は「そうそう、それが伝えたかったんだ」と膝を打った。口頭では伝えにくかったテクニックも、実践しながらならわかりやすいという。

「帰属意識を持ってほしい」

 同社の渋谷誠営業部長は、研修制度を充実させる狙いとして「会社への帰属意識を持ってほしい」との考えを語る。この会社で働き続けたい、活躍したいと意識することで社員が成長し、それが企業としての成長にもつながる。そのために欠かせないのが研修の充実というのだ。

NTT西日本ビジネスフロントの渋谷誠営業部長

 営業経験の少ない若手が成果を出すのは簡単ではない。成績優秀者を表彰したりインセンティブ制度で成果報酬を多く出したりしても、成果を出せずにいる若手が会社への帰属意識を持つとは考えにくい。それどころか、上客の担当や営業ノウハウをベテランたちが独占していると感じるかもしれない。

 NTT西日本ビジネスフロントでは、グループの他社が担当していた顧客を引き継ぐようにして担当する顧客企業が急速に増えている。今後は、事務作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)など、扱う商品の幅も一層広げていく計画だ。顧客の課題を聞き出して、最適な提案をする力を持った営業担当者を増やしていかなければならないのだ。

 若手を集め、成果が出せるように育て、環境も整える――。この人手不足時代に営業人材を増やして組織を成長させるためには、社員を定着させ、成長を促す体制が必要になっている。

日経ビジネスの3月25日号特集「凄い人材確保」では、この他にも日本企業の人手不足の現実を研究した。