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 開幕まで残り500日を切った東京五輪。混雑対策の一つとして大会組織委員会や東京都が検討しているのが「ダイナミック・プライシング」だ。導入が取り沙汰されているのは、混雑に応じて首都高の通行料金を動かす試み。大会関係者の円滑な移動と、食品の物流など生活インフラの維持は両立できるのか。

東京五輪を成功に導くには、高速道路の渋滞対策が不可欠だ。(写真:つのだよしお/アフロ

 対策を講じなければ、首都高はいつもの2倍渋滞する――。

 2020年東京五輪・パラリンピックをめぐる、そんな試算が話題を呼んでいる。大会期間中は、普段から混み合う過密都市に関係者など約1000万人の往来が加わる。もちろんJRなど鉄道の混雑も課題とされているが、それ以上に、トラックが食品や日用品を運ぶ首都高は対策が「待ったなし」の状況だ。(関連記事:電車も宅配も滞る 「混雑五輪」高まる懸念

 組織委や東京都は、大会期間中は「平日であっても休日並みの交通量(普段の平日より15%減)を実現する」との目標を掲げる。もともと物流会社への協力要請など「共助の輪」に頼るとしてきたが、ここにきて急浮上しているのが「混雑区間や時間帯に課金することで、利用を抑制する」(第4回 交通輸送技術検討会)という案だ。

 料金の変動により、果たして交通渋滞は解消できるのか。参考になりそうな調査がある。NECが2018年に米国で実施したシミュレーションだ。

「時速72キロ以下」の時間帯解消

 NECが分析したのは、北米で有料道路を運営するある公共機関の走行データだ。この公共機関ではセンサーで交通量を検知して、混雑に応じて3~8ドルという幅で料金を動かす施策を導入済みだった。しかし混雑が発生してから料金を動かすのでは、効果的な交通量の調整に間に合っていなかった。

 そこでNECが取り組んだのが、過去の交通量データや天候などをもとにした交通需要の予測だ。NECは予測結果に沿って料金の上げ下げを試行。すると従来は通行速度が時速45マイル(約72キロメートル)を下回る時間帯が1日2度発生していたが、これを解消できることがわかったという。

 今回はシミュレーションではあるが「混雑状況に応じて精緻に料金を動かすことで、渋滞解消につながることが分かった」とNECの西岡到・主任研究員。数年後の実用化に向けて、予測精度に一層の磨きをかける考えだ。

 ダイナミック・プライシングの実用化には、料金の変動をただちに反映して消費者に知らせるシステムの存在が欠かせない。この点、高速道路の料金はETCという仕組みがすでに整備されている。

 料金上昇で有料道路を使わなくなったひとが、今度は一般道に集中してしまう可能性など、課題が数多く残っているのも確か。だが世界から注目の集まる東京五輪に向けて、検討に十分値する案であることは間違いなさそうだ。

商いの根幹である値決めに、革命が起きようとしている。ネット通販サイトはより頻繁に、細かく、自動で価格を動かし、「一物一価の原則」が通用しない時代が目前に迫っている。日経ビジネス3月18日号特集「ダイナミック・プライシング」では、アマゾン・ドット・コムなどを舞台に急変動する価格の裏側に迫り、消費者の生の声も掲載している。