全2934文字

次も親日的な政権は現れない

韓国国会議長が天皇陛下に謝罪を求める発言をしました。

 相手の歴史と国民感情を知らないということでしょう。国会議長は本来は親日的な人なのに、日本人の神経を逆なでにする。これでは日韓関係の改善はおぼつかない。今上天皇がどれだけ戦争に対して正面から向き合ってこられたか。政治サイドが忘れたようなことを天皇は自分の心の重荷としてずっと担いでこられて、日本国民全員が大変に尊敬している。それが分かっていたら出るような言葉ではない。親日層、知日層でもあんなものかとがっかりしました。

文在寅政権の対北朝鮮、対米、対中、対日政策をどのように評価していますか。

 北朝鮮との融和に前のめりになっていることが心配です。そのことにすべての優先順位を置いているがゆえに、日本との関係が悪くなっている。今までの韓国の政権は米国との関係を重視して中国、北朝鮮との関係を悪くするか、中国、北朝鮮との関係を重視して、米国との関係を悪化させるかのどちらかでした。ところが文政権は米中とうまくやっている。その代わりに日本を切り捨てている。対日関係は文大統領が改善したいと思わない限り、前に進みません。

 米国は韓国が北朝鮮に寄り過ぎていると懸念しはじめていますが、韓国が米朝協議のお膳立てをしたという意識はあります。日韓関係については、もう少し韓国は日本に対する態度をかえるべきという意見が徐々にワシントンで強くなっています。

 中国で次に指導部になるのは「第6世代」といわれる、今の40代後半から50代半ばの人たちです。欧米に留学し、日中関係の蜜月時代、胡耀邦氏の時代に育った、日本に対して中立的な人々です。ところが韓国でその世代に対応するのは60年代生まれで、80年代に民主化運動に参加した反米、反日の「386世代」。文氏から次の世代の政権に移ると、世代の平均値としては対日感情が厳しくなっていきます。

 文政権の次に親日的な政権が突然現れることは考えにくく、次が保守政権であっても難しいでしょう。韓国の大統領は任期が終わると逮捕される人が何人も出る。だから国民受けする政策をとって政権基盤を盤石にしないといけなくなる。最も手を付けやすいのが対日批判、という構図は変わっていません。

 だから、当面打つ手は無いのではないでしょうか。関係改善には15年は必要だと思います。「よく話し合って相互理解を深めるべき、未来志向でいくべき」と言いたいですが、正直なところ難しい。ダメージコントロール、つまり国際社会に説明することなどにより、日本がどうしたら被害を極小化できるかを考えるべきと思っています。

 しかし、日韓関係には期待できる面もあります。人口が5100万人の韓国から年間750万人の観光客が日本に来ている。これは韓国の対日感情を着実に変えていくことになります。日本に来てみれば徴用工や慰安婦で連想するような日本とは全く違うことがわかってもらえると思います。

日韓関係が悪いままで、安全保障上の問題は生じませんか。

 米国も含めた東アジアの安保関係は、これから困ることになるでしょう。自衛隊と韓国軍が共同行動をすることはあり得ません。しかし、在日米軍と在韓米軍は、ともにハワイのインド太平洋司令部のもとにある同じ軍隊で、それぞれの役割によって日本と韓国に置かれています。在日米軍は韓国防衛にもあたるし、在韓米軍は日本防衛にもあたります。これは米軍の集団的自衛権の適用です。ところが米軍を置いている日本と韓国の関係がこれだけぎくしゃくすると、それがうまく運用できるのでしょうか。

 トランプ大統領が在韓米軍の削減の方向に向かった場合、日本の安全保障を脆弱化させます。そういうこともあって本来、日韓の協力体制は必須ですが、それができる状況でないなら、日本としては米国と協力しながら独自に北朝鮮に対する抑止力を増強することが一層重要になると思います。

 日本と韓国の関係がかつてないほどに冷え込んでいる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が歴史問題を繰り返し持ち出していることだけが原因ではない。韓国国会議長は天皇陛下に謝罪を求める発言をし、日本の対韓世論は急速に悪化している。抗日独立運動100年を迎えた3月1日には、韓国政府が大規模な記念行事を開いた。なぜこんなに関係がこじれてしまったのだろう。日本に反発する動きの背景に何があるのか。韓国の政治や経済、企業活動の実態はどうなっているのか。日経ビジネス3月11日号 特集「韓国 何が起きているのか」では、その実相を探る。