日経ビジネスの3月11日号特集「韓国 何が起きているのか」では政治から経済まで日韓を取り巻く環境の変化を取り上げた。かつてないほど冷え込んだ二国間関係をどうみればいいのか。外交評論家の岡本行夫氏に聞いた。

外交評論家、岡本アソシエイツ代表
1945年生まれ、神奈川県出身。68年一橋大学経済学部卒、外務省入省。91年に退官し岡本アソシエイツを設立。橋本内閣、小泉内閣と2度にわたり首相補佐官を務める。立命館大学客員教授、東北大学特任教授、青山学院大学特別招聘教授、MIT国際研究センターシニアフェローを兼任している(写真:菊池一郎)
国際社会の中で韓国は日本にとってどんな存在なのでしょうか。
本来、韓国は日本のいちばん重要なパートナーになっておかしくない国だと思っています。国際会議で同じような立場を取り、自由貿易圏を形成し、国民の交流も増やしていくという相手のはずです。
金大中大統領の時はそういう方向になるのかという望みがありました。1998年に日本の国会で「未来志向的な関係を築く」と演説したときは私も感動しました。指導者が前向きかどうかは二国間関係において大変重要です。しかし、盧武鉉、李明博、朴槿恵、文在寅各大統領は自らの政権基盤を強化するために国民の反日感情をあおって、国内の政策を推進していくという道をとりました。
文在寅政権は過去の歴史問題にいまだに言及します。日韓関係は改善できないのでしょうか。
植民地支配の歴史については、日本は韓国に虚心坦懐に反省すべきだと思っています。1910年の日韓併合で日本の一部とし、彼らの国民性、国家としてのアイデンティティを奪いました。これが韓国の日本に対する怨念の淵源であり、我々はこのことをきちんと認識しないといけません。しかし戦後、日本は経済協力もし、反省もして、歴史的な問題にきちんとした対応をとっています。
ところが韓国の国民性なのでしょうか。朴槿恵前大統領は就任直後の抗日独立運動の式典で「加害者と被害者という立場は1000年たってもかわらない」と演説し、特に若者の反日感情を煽りました。これは大きな責任があったと思います。そして中国に対して、伊藤博文を暗殺した安重根の記念館を共同でハルビンにつくろうと働きかけて実現してしまいました。意図的に歴史的な怨念を掘り起こしています。それが続く限りは日韓関係の改善は無理です。
日本政府も少し問題があると思います。たとえば、どうして日本は慰安婦に日本人女性が多くいたということを国際社会にきちんと言わないのでしょうか。戦場に婦女子を送るという野蛮な制度はもちろん非難されるべきですが、韓国が主張する「性奴隷」というシステムなどは存在しませんでした。実態についての日本政府の立場を事実をもって説明すれば、少なくとも欧米の印象は随分変わるでしょう。日本にとって深刻なのは韓国にどう思われているかということ以上に、国際社会で日本がどう思われているか、なのです。
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