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日本は米国にそれほど影響力がないなら遠慮する必要はない、と。

 韓国に海上自衛隊の護衛艦が寄港する際に、艦隊旗(旭日旗)を掲揚するのを禁止する法案が、ある議員によって昨年8月、国会に出されました。ただし制定には至っていません。徴用工の判決も近づいていた。文大統領は日本の米国への影響力が低下しているのなら、これらの動きを無理に抑える必要はない、と考えたのだと思います。

 李明博(イ・ミョンバク)元大統領、朴前大統領の時代は対日関係への配慮から抑えられていたものが、噴出した格好です。今の政権では知日派が影響力を持っていないことも重要なポイントです。だから日本がどれだけ怒っているかもわからない。

知日派不在とはいえ、日本の世論の動向にそこまで無知ということがありえるのでしょうか。

 韓国の国としての建前からすれば、植民地支配がそもそも違法ですし、日本軍の象徴でもあった旭日旗に良いイメージはないでしょう。自分たちにとって常識になっていることだから、日本もある程度の理解を示してくれるだろう、という雰囲気はありますね。だからなぜ、こんなことで日本はそんなに怒るんだ、と彼らは考えるわけです。

 レーダー照射問題も、そもそも「(自衛隊機が)なぜ俺たちを監視するのか」という感じが強くある。「そんなことをするのは、右派の安倍晋三政権だからだ。政権が交代すればまた(日本の態度も)変わるだろう」という観測も強く存在する。実際には、(自民党内では比較的リベラルな派閥の)宏池会の政権が出来ても、韓国への政策が変わるとは思えませんが、それが彼らにはわからない。

次も進歩派政権になる可能性がある

政治家に知日派がいなくても、外交官はいます。官僚から情報が上がらないとは考えられません。

 知日派官僚が(様々な日本への対応について、それは問題だといった献策を)上げても青瓦台(大統領府)はあまり聞いていないようです。そもそも官僚の中にも日本外交に経験のある人材が減っている。日本の優先順位は明らかに下がっているので、知日派の要請もなおざりになっているということですね。

それでも徴用工問題など、既に国家間で解決済みのことをひっくり返す理由にはならないと思いますが。

 徴用工判決については、文大統領は自信を持っている。自分が弁護士で法律の専門家だという自負をもっているからです。韓国の国内法をそのまま適用すれば、ああいう判決にしかならない、だから日本はそれを受け入れるしかない、と考えているのだと思います。

 他方で徴用工について(慰安婦問題のように対象者に支援をする)財団をつくるという方法もあるのですが、実はこれを実行した場合、支援対象者の認定が大変だという問題もある。たとえば大企業が直接雇った人は記録が残っているでしょうが、そうでない人は記録を探すのも難しい。でも、認定を厳しくすれば必ず国内から批判が出る。だから財団方式もやりたくない。

最低賃金の引き上げや、公務員の増員を中心に雇用を増やそうとする文大統領の経済政策には国内でも評価は割れているようです。支持率も低下傾向です。それも対日姿勢に影響していますか。

 文大統領の経済政策への評価は就任当初から比べれば低下しており、対北朝鮮政策にしか活路はない、という意見もあります。ただ、大統領の支持率は依然、50%を少し切ったくらいで、このレベルである程度安定してしまっている。与党である民主党の支持率も40%近く、未だ保守系野党に差をつけている。だから、この与党支持の「岩盤」層を抑えていれば何とかなると見ているのかもしれません。保守派には弾劾された朴前大統領とその支持勢力とどう向かい合うか、という難問もありますから、このままだと進歩派である文政権の後もまた進歩派大統領になる、というシナリオが現実になる可能性も高いかもしれません。