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トランプ米大統領は、在韓米軍について今年初め、撤収の計画はないとしましたが、駐留経費の増額を求め、韓国と長い交渉になりました。在韓米軍は今後もその規模を維持するのでしょうか。

 米国と韓国との間での在韓米軍の駐留経費交渉は昨年長く続き、米国側は当初、米韓合同軍事演習で戦略爆撃機がグアムから韓国に展開する際の「作戦支援費」を新たに負担項目に含めるなど、韓国側の負担を大幅に増やすよう要求したとされます。

 これに対して韓国はかなり抵抗をしましたが、結局、8%増で合意しました。従来は5年だった駐留経費の合意期間を今回は1年にしています。これは米国が、毎年この件を議題に取り上げることにより、今後さらに増額圧力を強める可能性を示唆しているのかもしれません。

 それでも韓国が結局は引き上げに応じたのは、北朝鮮と裸で付き合う、つまり在韓米軍撤退についてはまだ早い、韓国軍だけで北朝鮮の抑止と対処は十分にできないと思っているからでしょう。米軍の存在はやはり必要なのです。

編集部から

 米国と韓国は2019年以降の在韓米軍の駐留経費について昨年春から今年2月まで交渉を続けてきた。いったんは米国が2018年の韓国側負担の経費に対して5割増とし、経費決定の期間も1年単位とするよう要求したと言われ、韓国と対立した。トランプ大統領は「米国は韓国との間で大きな貿易赤字を出しながら防衛をしている」と不満を示してきた。しかし、結局今年2月に2019年の駐留経費を前年比8%増の約1兆389億ウォン(約1040億円)とすることで合意した。韓国の負担が1兆ウォンを超えるのは初めて。

北朝鮮の核放棄はあり得ない

裸で動けないというのは実力が不足しているということですか。

 軍事力というものをどう見ればいいか、3つのポイントがあります。1つは軍事力を背景にして、どのように国家活動を進めるかという「意図」。2つ目は軍事能力そのもの。そして3つ目は地政学的な意味です。

 その視点で捉えて段階評価をすると、文政権は韓国軍を対北で有効果断に活用する意図はほとんどないでしょう。軍事的な能力はまずまずですが、地政学的な優位性はゼロといったところでしょう。一方、日本が自ら自衛隊を使って何かをするという意図は、他国から攻められない限りあり得ません。でも、自衛隊の能力は高いですし、先ほど半島有事の際の米軍にとっての軍事的な意味でもお話ししましたが、我が国の総合的、地政学的な重要度は極めて高いと言えます。

在韓米軍と韓国軍の実力とは。

 在韓米軍はかつては5万人。今は2.8万人になっています。当時韓国は反対しましたが、冷戦終了により、米軍の世界戦略に対応して、そこまで縮小しました。一方、北朝鮮はサイバー攻撃や特別部隊は強力だと思います。しかし、米軍がアラスカや本土に置いている(機動性が高い)ストライカー旅団やヘリコプター機動旅団を半島で十分に機動運用する体制が確立できれば、米軍が現在の規模で韓国に常駐する必要はなくなります。北の抑止と対処のために、機動展開になじまない部隊と装備に限り韓国に配置し、他は機動展開することも一つのオプションでしょう。

日韓の今後の軍事協力はどうなるでしょう。1年ごとに期限を迎える日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)はどうなるでしょう。

 GSOMIAは今年も延長するでしょう。そうせざるを得ないはずです。先ほどもお話ししたように、韓国は裸で北朝鮮に対峙はできません。米軍の駐留経費引き上げと同じです。韓国は今後とも我が国に対し色々言うでしょうが、朝鮮半島の米軍作戦支援を含めたキャスティングボートは我が国が握っていますので、日本としては「So What(それで?)」「それでどうしますか?」という態度でいいのです。韓国の個々の言い分に一々反論して、我々の気持ちが「すかっとする」ことは、戦略上の上策ではなく、下策なのです。

米朝首脳会談は物別れに終わりました。北朝鮮の核放棄は進まないようです。

 米CIA(中央情報局)や国家情報局の報告から、北が核放棄をすることはあり得ないと考えるべきです。今回は予想通りの結果でした。

 日本と韓国の関係がかつてないほどに冷え込んでいる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が歴史問題を繰り返し持ち出していることだけが原因ではない。韓国国会議長は天皇陛下に謝罪を求める発言をし、日本の対韓世論は急速に悪化している。抗日独立運動100年を迎えた3月1日には、韓国政府が大規模な記念行事を開いた。なぜこんなに関係がこじれてしまったのだろう。日本に反発する動きの背景に何があるのか。韓国の政治や経済、企業活動の実態はどうなっているのか。日経ビジネス3月11日号 特集「韓国 何が起きているのか」では、その実相を探る。

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本文中の「火気管制レーダー」は「火器管制レーダー」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は既に修正済みです [2019/3/13 11:00]