日経ビジネスの3月11日号特集「韓国 何が起きているのか」では、悪化を続ける日韓関係について有識者の見解を紹介した。外交だけでなく、昨年末の韓国軍艦による自衛隊機へのレーダー照射問題など、安全保障面でも日韓の関係は冷え込んでいる。半島有事の際の日本の安全保障はどうなるのか。軍事面で韓国とどう付き合うべきか。海上自衛隊の元艦隊司令官、香田洋二氏に聞いた。

1972年3月、防衛大学校卒、海上自衛隊に入隊。97年海将補に昇任、護衛艦隊司令部幕僚長。2003年海将昇任、護衛艦隊司令官。2007年自衛艦隊司令官に就任。2008年8月に退官。(写真:菊池一郎)
昨年末の自衛隊哨戒機への韓国海軍の火器管制レーダー照射問題について、韓国側は今も照射を否定しています。
世界中の軍事関係者は日本の主張が正しいと見ています。韓国の人以外はそうだと言える。中立的な立場でプロの常識を働かせれば言うまでもないことです。
海上自衛隊のP1哨戒機が昨年12月20日、日本海・能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内を飛行中、北朝鮮船舶に対する救難活動を実施していたとする韓国海軍駆逐艦から突然、火器管制レーダーの照射を受けた。この照射は目標にミサイルなどを向ける攻撃直前の行為。日本や韓国など21カ国の海軍などが2014年に採択した海上衝突回避規範で、この行為は攻撃の模擬とされ、指揮官は回避すべき動作と規定している。
韓国国防省は当初、「正常な作戦活動の中でレーダーを使った」としていたが、後に火器管制レーダーの照射を否定し、捜索用レーダーを使用したと主張を変えた。自衛隊はこれに対し、探知した電波のデータや画像などを公表したが、韓国側は自衛隊機が「威嚇飛行」をしたと非難をし、主張は対立したままとなっている。
日本はもっと戦略的に動くべき
その後も韓国海軍は2月に予定していた海上自衛隊舞鶴基地への艦隊司令官派遣を中止し、日本側も韓国釜山への護衛艦「いずも」の寄港を取りやめるなど、関係は全く改善していません。
韓国の文在寅政権は、ただ日本を無視し、北に軸足を置いて、反面で日本の価値をはるかに軽く見ているだけ。日本は、そのような文政権の個々の政策に過敏に反応するのではなく、「丁重な無視」をするということではないでしょうか。自民党の中には「(韓国に)謝罪を求めるべきだ」など元気のいい声もあるようですが、それだけでもだめだと思います。
どういう対応が必要だと考えているのですか。
韓国は「元々悪いのは日本」で凝り固まっています。政府間の合意などは関係ないと思っている節もある。その考え方は、我々とは全く違いますので、説得して変更を求めても、そうはならないでしょう。その前提で日本は、もっと戦略的に動くべきです。例えば半島有事の際、米国が同半島での軍事作戦を実施する上で、日本が極めて重要になることは韓国も否定できません。
日本は、米韓、米朝の間で起きている動きについて、「我々も国益に関係する」として入り込むことは出来るはずです。日米安保条約には、(有事に向けての)事前協議という条項があります。朝鮮半島有事の際の米軍の戦闘作戦行動、特に我が国の基地からの作戦行動は、日本の安全保障と密接な関係を持つことは明白です。この観点から、もっと米韓、米朝の動きに関わっていいはずです。
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