日経ビジネス電子版読者の皆さん、とにかく、まずはこのメロディーを聴いてもらいたい!

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 一度聞くと頭から離れない、どこか懐かしさを覚える親しみやすい旋律とともに、特売品を紹介する店員さんの威勢のいい声が続く。スーパーマーケットの売り場で耳にした人が多いのではないだろうか。ただ、流れているのはスーパーだけではなく、薬局やディスカウントストアなど、資本や系列、そして業態を超えている。このポポーポポポポ音の正体とは何なのか。そしてなぜ急速に広まりつつあるのか。

 この製品のことを知る人は少ないはずだ! その思いを胸に、謎を解き明かすべく、筆者は開発元がある群馬県に足を運んだ。

 都内の北千住駅から東武鉄道の特急列車「りょうもう」に揺られること1時間半、さらに東武桐生線に乗り換え、終点駅でもある赤城駅へ。そこから徒歩数分のところに、開発元の群馬電機(群馬県みどり市)がある。

こちらが群馬電機の本社だ
こちらが群馬電機の本社だ

 このポポーポポポポ音を発する製品は同社が開発した販促機器で、製品名は「呼び込み君」という。何ともストレートなネーミングだが、実際に呼び込まれて気づけば自宅から4時間近くかけて群馬県まで来てしまったのだから私の完敗だ。

これが「ポポーポポポポ」の発信源である「呼び込み君」シリーズだ。(写真:山下 裕之)
これが「ポポーポポポポ」の発信源である「呼び込み君」シリーズだ。(写真:山下 裕之)

 音はよく聞くけれど、その発信源など目もくれずに買い物をする人がほとんどだ。店舗では黒子のように目立たない場所に置かれる場合も多く、呼び込み君を初めて見る読者も多いのではないだろうか。見た目は何とも愛らしい顔と、両手を広げたポーズでお客を歓迎し、胴体中央部には大きなスピーカーを配し、その上にはセンサーが付いている。来店客にセンサーが反応すると、あの独特なメロディーが流れ、特売品などの情報を流す仕組みだ。

 かつては、スーパーなどにお客が来たとき、従業員が威勢のいい声を出してお薦めするか、録音した音声をテープで流す営業が一般的だった。それをデジタル化しベストセラーになったのがコレだ! 2000年に初代を発売以降、累計出荷台数が5万台を超えるヒット商品になった。なぜこのニッチでちょっと変わった商品が驚異的に売れるのか。今回、群馬電機で呼び込み君の開発を担当した藤巻剛・常務取締役に、開発の経緯や売れ行きが急拡大した真相を聞いた。

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