高齢化するプラモデル愛好家

 かつては子供向けが中心だったプラモデル。テレビゲームやネット、スマホの普及で遊びが多様化し、子供向けの市場は厳しい競争環境にさらされている。それでも、中高年の趣味として一定の需要はある。日本玩具協会の調べでは、プラモデルやフィギュアなどの国内玩具市場規模は19年に1383億円で、玩具市場全体の2割弱を占める。

プラモ市場は一進一退が続く(単位:億円)
<span class="fontSizeL">プラモ市場は一進一退が続く</span>(単位:億円)
出所:日本玩具協会「国内玩具市場規模調査」
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 「趣味にはお金がかかっても良いものを使いたい層が多く、玄人にも満足していただける製品開発を心掛けてきた」(森課長)

 そこで登場したのが、このメッキシルバーのマーカーだ。実はこの色、発売したのは今回が初めてではない。15年前にも1度発売した過去がある。当時もプラモデル愛好家からは評判が高かったが、輸入していた原料の開発元が製造を中止したため、マーカーの製造販売もやめざるを得なかった。

 発売中止後も再販を求める声が多く寄せられ、ホビー部は地道に開発を続けてきた。かつての開発元が特許を保有しており、違う方式で同じような商品を作らなければならなかった。開発を担当したホビー部の荒木太歩(たふ)さんは「以前と同じものは出したくない。超える新製品を出したかった」と語る。

プラモデルは中高年の趣味として一定の需要がある。今後、子供がどれだけ遊ぶようになるかが重要だ(写真:PIXTA)
プラモデルは中高年の趣味として一定の需要がある。今後、子供がどれだけ遊ぶようになるかが重要だ(写真:PIXTA)

 代替原料を見つけるのに長時間を要し、調合を変えて数十パターンの試作を重ね、安定性の試験を経てようやく発売にこぎ着けた。気づけば10年近い年月がかかっていた。

 こだわったのは顔が映り込む鏡面のようなきれいな仕上がりだ。類似する色のシルバーなどは粒子を目立たせて輝きを演出するが、極力粒子が目立たないように工夫を凝らした。乾くまでの時間の調整も大きな課題だった。速乾を追求すると、どうしてもペンの筆跡が残ってしまい、鏡面のような仕上がりにはならない。

 時間をかけて乾く間に表面が平滑化する仕様だが、あまりにも時間がかかりすぎると、ユーザーの使い勝手が悪くなってしまう。半日程度で完全に乾くように仕上げた。

 1本660円(税込み)はガンダムマーカーEXのほかのカラーに比べると倍以上の価格にもかかわらず、数万本が一気に売り切れた。仕上がりの良さや手ごろ感もあり、使う用途はガンプラに限らない。ミニ四駆やミニカーといったほかの玩具の塗装など利用の幅は広がりつつある。

 ホビー部の森課長はそれでも危機感を抱いている。中高年が中心の愛好家の多くは、幼少期にプラモデルを作って遊んだ原体験を持つ。その原体験を持たない若い世代を新たに取り込むのは簡単ではないからだ。

 コロナ禍で、在宅を余儀なくされる中で、父親世代が久しぶりにプラモデルを作る「復活組」も増えているという。子供と一緒にプラモデルを楽しむ親が増えれば、それが原体験となって裾野が広がる。

 これまでプラモデルに関心が薄かった新規ユーザーをいかに獲得するか。10年の歳月をかけて開発した「誰でも簡単に塗れてきれいに仕上がる」ガンダムメッキシルバーは、その課題を乗り越える可能性を秘めている。

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