ホームセンターにヒアリングしても、今はめっきり売れなくなった商品だという答えが返ってくる。周囲に相談すれば、今まで培ってきた事業をやめるのはもったいないと言われました。しかし、価格競争の渦に巻き込まれたままでは会社を存続できないとの思いがありました。同時進行ではどっちつかずになる危険があり、心中する気持ちで経営を神棚に集中させました。

 最初に開発したモダン神棚のコンセプトをもとに商品開発に2年ほどかけ、15年(平成27年)9月に後のヒット商品となる「かみさまのたな」を発表。16年(平成28年)4月に発売しました。

フローリングにマッチすることを目指した「かみさまのたな」シリーズ。デザインモチーフは雲で、角の丸みが強調されているのがほかの神棚にはない特徴となっている
フローリングにマッチすることを目指した「かみさまのたな」シリーズ。デザインモチーフは雲で、角の丸みが強調されているのがほかの神棚にはない特徴となっている

従来の神棚と比べると非常にシンプルなデザインですね。

杉本氏:現代の住宅に合うようにアレンジすればいいというわけではなく、アレンジとしつらえとしての格式の高さなどが共存する必要があります。そのため、完成までには試行錯誤しました。ニーズはあると確信していましたが、発売後2年ほどはじわじわと売れるのにとどまり、爆発的なヒットにはなりませんでした。

業績に大きく貢献

杉本氏:そもそも、多くの人がこうした現代住宅にマッチする神棚があることを知りませんし、知らないから諦めてしまっているという状況でした。そんな中、NHKの番組『あさイチ』でかみさまのたなが紹介されたんです。

NHKだと商品名は出ませんよね。どのぐらい反響があったんですか?

杉本氏: 200件ほど一気に注文が入りました。

 10分間ほどの放送でしたが、「静岡」「神棚」という2つのキーワードを軸に、多くの人がインターネットからモダン神棚にたどり着いてくれたんです。この番組が契機になり、弊社やかみさまのたなことを多くの人に知ってもらえるようになりました。自画自賛にはなりますが、私たちが思っていたように、こういった神棚が欲しいが、ないから神棚を置くのを諦めていたという人が本当に多かったんです。

 この番組での紹介が呼び水となり、他のテレビ局からの取材などもあり、ニーズが顕在化し、静岡木工が成長曲線を描き始めるきっかけとなりました。

モダン神棚の購入者はどういった人が多いのですか?

杉本氏:35~45歳の女性の方が多いですね。ただ、弊社ではSNS(交流サイト)なども活用しており、若い人への訴求もできていると思っています。賃貸住宅などで新たに神棚を購入したいときに選んでもらうことが増えています。

注目された結果、競合企業の参入はありませんでしたか?

杉本氏:かみさまのたなは出してすぐヒットしたわけではなく、ニーズにどう応えるかということについて試行錯誤した期間がありました。それだけに、他社もまねしにくく、その点でアドバンテージがあったと思っています。

 また、通常の家具と異なり神棚はどういったメーカーや職人が作っているかという点を購入者が気にされます。また、デザインが良いだけで買ってもらえるとは考えていません。弊社では、神社との取り組みも強化しており、神社からもお墨付きをもらえる神棚を作り、素材も木工メーカーとしての目利きをした質の良いヒノキを使う。一朝一夕にはまねできません。

 今では、他社が中国などで生産した商品を競合品として販売していますが、購入者は「間違いないところで買いたい」と考える人が多く、比較検討されても負けないという強みがあります。

モダン神棚のヒット後、業績はどう変化しましたか?

杉本氏:神棚に経営を集中したことで、売り上げは約3.5倍になりました。

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