従来から、低価格と短納期を売りにしたオーダースーツはあった。伝統的な「仕立て屋」が1枚ずつ型紙から起こすフルオーダースーツに対し、基本的な採寸と試着で注文できるものはイージーオーダースーツなどと呼ばれ、紳士服専門店などが販売している。しかし価格が5万円程度から、納期は3週間からの商品が多く、体型の悩みや着心地へのこだわりがある一部の顧客にしか広がっていなかった。

 「カシヤマ ザ・スマートテーラー」は価格、納期ともに一段階抑えてコストパフォーマンスを引き上げたことで、多くの消費者に試してみようという気にさせているようだ。手軽に買えるブランドの印象は、老舗のオンワードにとって、従来のイメージを覆す試みともいえる。

 2019年2月期の販売数は5万6000着で売上高は37億円。役職が付いたことをきっかけに量販店の既製服から一段ステップアップしようとする30代後半~40代の男性会社員がメインの客層だが、30代前半や20代にも裾野が広がってきた。

 オンワードパーソナルスタイルの関口猛社長は「19年2月期は期初に販売5万着と高めの目標を掲げたが、実績はそれを上回った。2020年度には最低でも100億円を目指す」と自信を見せる。中国では4月、既存工場の2倍以上の生産力を持つ第二工場を稼働した。

採寸や試着に対応する店舗を拡大中。米国にも進出した
採寸や試着に対応する店舗を拡大中。米国にも進出した

 採寸や試着は14カ所の直営店で常時受け付けるほか、予約が入ったときのみ開店するサテライト店舗を設けている。2月には米国にも進出した。二度目以降は採寸なしでオンラインで注文できるが、顧客層を広げるためにも出店ペースを緩めない方針を示している。