総務省の2016年度社会生活基本調査によると、楽器演奏を趣味にする人は1240万人いる。国民のおよそ10人に1人になる計算だ。一方で、実際に音楽教室に通っているのは40万人程度にすぎない。宍戸代表はこの状況を「皇居の周辺や土手沿いを走るランナーはたくさんいるのに、ジムに通う人がほとんどいない状況」と例える。潜在市場は大きいのに、サービス業が顧客として取り込めていないという意味だ。

 音楽教室側が、自ら市場を狭めてきた面もある。リアルな音楽教室を構える場合、週末やアフターファイブしか時間が取れない社会人より、時間の自由が利く子どもやお年寄りをターゲットにしたほうがいいと考えてきたからだ。こうしてリアルの教室が取りこぼしてきた20代から50代前半までの層をフォニムは今、顧客として取り込んでいる。

札幌でピアニストを目指す中で

 かつてピアニストを目指していた宍戸氏は東京大学に進学し、エンゼル投資家として知られた故・瀧本哲史氏の自主ゼミで、共同創業者となる渡辺氏と出会った。大学4年生のときから事業の夢を語り合い、卒業した2017年の春にフォニムを起業した。

フォニム共同創業者の宍戸光達代表(左)と渡辺陽樹代表
フォニム共同創業者の宍戸光達代表(左)と渡辺陽樹代表

 宍戸氏は札幌市の出身である。「どうして札幌にある音楽大学向け予備校には著名な講師が来てくれないのか」「どうして東京までレッスンに通わなければいけないのか」。地方都市でピアニストを目指す中で、宍戸氏が感じていた疑問が起業の原点となった。

 コロナ禍をきっかけに、時間や場所にとらわれないサービスの裾野が広がっている。オンライン向けに丁寧にカリキュラムをつくり込んだフォニムから学べることは多そうだ。

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