オンラインでも飽きさせないために

 手ごろな価格で、時間や場所を選ばずに一流講師のレッスンを受けるというサービスを実現する上でポイントになったのが、レッスンを「非同期」にしたことだ。コロナ禍で身近になったビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」などの配信システムを使えば、講師と生徒をライブでつなぐこともできるが、あえて事前に撮った動画を配信する仕組みを採用した。

 非同期であれば、レッスンを撮りだめできるため、演奏家の負担は軽く、売れっ子でも講師を引き受けてもらいやすい。一方、生徒も時間や場所に縛られない。両者にとって都合が良いと考えた。

 課題もある。音楽に限らず、有酸素トレーニングやヨガなど、教材のDVDを購入したものの、長続きしなかった経験は多くの人に心当たりがあるだろう。また、ウェブ会議をはじめとするオンラインでのやりとりは、対面以上に集中力を要する。

 そこで、フォニムが配信するレッスン動画は1本あたり5分から10分程度までと短くした。もう一人の共同創業者である渡辺陽樹代表は「長時間のレッスンでは受講者も疲れてしまう。1回のレッスンは、なるべく短い時間で完結できるように工夫した」と説明する。

ランナーとジム会員との関係に近い

 動画の内容も試行錯誤を重ねた。

 音楽教室では、講師がまず楽器を弾いてみせて、生徒はそれをまねるといった“伝統芸能的”な教え方が主流だ。しかし、これをそのままオンライン化したら、とても生徒の集中力は続かない。これまでアドリブを交えたマンツーマンで教えていた演奏家には抵抗もあったが、汎用的で系統立ったカリキュラムをつくることにこだわった。短時間で効率的なレッスン動画をつくれたのも、このカリキュラムが土台にあったからだ。

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