スタートアップのフォニム(東京・千代田)が提供するオンライン完結型の音楽レッスンサービス「PHONIM MUSIC(フォニムミュージック)」が好調だ。コロナ禍で音楽愛好家の外出機会が減ったことが追い風だが、レッスン動画の時間を短く区切るといったオンラインでも集中が途切れない工夫を施したことも奏功した。ゼミの同窓生2人が学生時代から5年間かけてアイデアを温めてきたサービスは、新常態(ニューノーマル)のビジネスを考える上でのヒントにあふれている。

著名音楽家によるレッスンを、スキマ時間を使って受けられる――。フォニムのサービスを一言で表すならこうなる。
若手ギタリストの注目株、徳永真一郎氏をはじめとするそうそうたる講師陣が毎月1回のペースでスタジオ収録した動画を教材として用意。会員はそれぞれ都合の良いときに、この動画を専用サイトで見ながら楽器の演奏を練習する。
長引く巣ごもり生活で、楽器をもう一度手にしてみようかと考える人が増えていることもあって、フォニムの会員数は2020年7月のサービス開始以来、前月比20~30%増で推移している。共同創業者の一人である宍戸光達代表は「21年12月に2500~3500人の会員獲得を目標にしているが、上振れする勢いを実感している」と手応えを口にする。
選ばれている一番の理由は「ハードルの低さ」だ。時間と場所にとらわれないレッスンスタイルはもちろん、月額料金も1980円に抑えた。毎月4820~7990円で電子楽器の貸し出しもしていて、1年半支払いを続ければ生徒の所有物になる。

従来の音楽教室は楽器メーカーや楽器販売店が開催していることが多く、レッスンの早い段階から楽器を買うように勧められることもしばしば。受講する上で心理的な負担になることもあったが、フォニムではこうした煩わしさとは無縁だ。
レッスンの流れはこうだ。講師による解説動画で独習した後に、自分の演奏を録音してサイト上にアップロード。併せて専用チャットに感想や質問を書き込むと、講師とは別にフォニムが手配したチューターが72時間以内を目安にフィードバックを送ってくれる。課題を達成できたと感じたら、次のレッスン動画へと進む。
現在はギター、ピアノ、バイオリン、サックスの4つのプログラムがあり、近々、ボーカル(歌唱)もラインアップに入る予定だ。
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