SNSで一気に知名度向上

 開発チームは5分程度で手間なくホットサンドを作れるまでに完成度を高め、19年10月の発売にこぎ着けた。燕三条キッチン研究所が決めたブランドコンセプトは「4w1h」。キッチンという場所(Where)は変わらないが、それ以外の「Why」「When」「Who」「What」「How」を全て見直すとの思いを込めた。

 ところが、当初はまったく売れなかった。ブランドの知名度が低く、商品の良さが伝わらなかったのだ。「月に数台ということもあった」と小川部長は振り返る。

 流れが変わったのは20年4月。緊急事態宣言が発出され、家庭での食生活をより良いものにしたいという機運が高まっているころだった。購入者がSNS(交流サイト)でホットサンドソロを紹介した投稿に大量の「いいね」が集まり、一気に広く知られるようになった。店舗でも直営のEC(電子商取引)サイトでも注文が殺到。税抜き4500円という決して安くない価格にもかかわらず、400~500台あった在庫があっという間にはけていった。小川部長は「相次ぐ注文に、社内では何が起きているのか分からない状態だった」と苦笑いする。

 好調は一過性では終わらなかった。10店舗でホットサンドソロを扱う雑貨店のロフトでは、21年1月からの約3カ月間で590台を販売した。ロフトの広報担当者は「入荷分はほぼ全て売れている状況。1人1台と制限をかけている店舗もある」と話し、「購買層は20~50代の女性が多い。自分用に買う顧客が目立つが、カップルや家族で使う人も一定数いるようだ」とみる。コロナ禍でブームとなっている「ソロキャンプ」での需要も多いようだ。

 「正直、これほど売れるとは思っていなかった」と小川部長は驚きを隠さない。販売台数は非公表だが、「今でも注文が相次いでおり、生産が追い付かずお待ちいただいている状況だ」(小川部長)。

 あまりの人気が負の側面も生みつつある。フリマサイトなどで定価の倍以上の値段でホットサンドソロを取引する例が出てきているのだ。小川部長は「あるべき姿でないことは十分に理解している」と話すが、地方の金属加工メーカーが急激な増産投資に踏み切るのは難しい。他の商品も並行して生産しなければならない。品薄状態はしばらく続きそうだ。

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