ビニール袋で空気を集める

 次のハードルは、いかにして付加価値を付けるか。単に、面白グッズとして売るつもりはない。実際に空気感を伝え、コロナが収束した折にはぜひ現地を訪れたいと思ってもらうことを念頭に置いたプロジェクトだから、購入者の満足は欠かせない。

 そこからは地道な作業を続けた。缶のパッケージデザインには、米軍が占領時代に認証店舗に張っていた「Aサイン」マークを使用。シリアルナンバーを記載することで値打ちを高めようとした。さらに、何種類ものオリジナル缶バッジを作ってランダムに入れ、どれが当たるか分からない「くじ引き気分」も演出した。

何種類ものオリジナル缶バッジを作ってランダムに入れ、「くじ引き気分」を演出
何種類ものオリジナル缶バッジを作ってランダムに入れ、「くじ引き気分」を演出

 「空気」の価値化では、新型コロナの流行後のPR向けに強化していたSNSをフル活用した。オリジナルキャラクターがビニール袋を手にして中心地の「ゲート通り」を走り、実際に空気を集めている動画を流したのだ(動画)。室内の空気が入らないよう、ベランダで行った封入作業には丸3日をかけた。

 販売価格は1つ税込み800円。缶詰を作る機械や缶の材料などはネットで購入し、1つ当たりのコストは650円ほどかかったという。40個入りの缶のセットを2つ買い、販売数は70としたが、全部売れても利益はほぼ出ない。

 ただ、目的はあくまでも地域の周知活動であり、将来の集客へとつなげることにある。プロジェクトの面白さに地元メディアは反応し、8月下旬に発売すると振興協会のオンラインショップや窓口にアクセスが集中した。関西地区などからも問い合わせがあり、わずか1週間で完売した。

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