自然で豊かな表情の写真をカメラが自動で撮影し、オススメも勝手に選んでくれる――。

 「思い出フォトグラファー」のキャッチコピーとともに、クラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で先行販売されたカメラが飛ぶように売れている。

 キヤノンマーケティングジャパン(MJ)が仕掛ける新型の自動撮影カメラ「PowerShot PICK(パワーショットピック)」がそれだ。クラウドファンディングの募集開始からわずか4日で応援購入総額が1億円に到達。マクアケでの最速記録を樹立した。

キヤノンMJがクラウドファンディングで先行販売した「パワーショットピック」

 見た目が小型の監視カメラのようなパワーショットピックは、早期購入者向けの価格が4万900円と決して安くはない。それでも「先着3000名」とした枠が4日で売り切れとなった。2月19日から追加で1000台の販売を開始したが、3月16日正午時点で残り124台と完売が近い。

デジカメ出荷台数、10年で93%減

 デジタルカメラ市場はスマホの登場によって様変わりした。スマホのカメラが高性能になり、誰もが手軽に写真や動画を撮影できるようになった分、専用機の需要が一気に減ってしまった。カメラ映像機器工業会(CIPA)の統計によると、国内メーカーの輸出を含む年間出荷台数は10年間で93%も減った。2010年には1億2000万台超を出荷していたが、20年は888万台まで落ち込んだ。そんな逆風が吹きつける中で、パワーショットピックは人気に火が付いた。

国内メーカーのデジタルカメラ出荷台数の推移
出所:カメラ映像機器工業会(CIPA)

 キヤノンMJはマクアケへの出品をテスト販売と位置付けており、正式な発売時期は未定だ。マクアケで購入したユーザーに届くのも今年7月以降であり、まだ厳密には「ヒット商品」とは呼べないかもしれない。それでも、縮小が続くデジカメ市場で購入希望者が殺到する製品を生み出した実績からは多くの学びが得られる。

 パワーショットピックとは、いったいどんなカメラなのか。

 「多くの一般ユーザーにとって撮影は手段であり、関心があるのはアウトプットだ。そうしたユーザーの声を反映した」

 開発を担当したキヤノンのカメラ製品企画部門の加藤寛人部長はパワーショットピックに込めた思いをこう話す。写真の愛好家はカメラを構えて撮影し、撮影した写真の中からいいものを選ぶという手順も楽しむが、一般ユーザーにはそうした作業が負担になっていると考えたのだ。

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