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 千葉県銚子市の私鉄「銚子電気鉄道」が昨夏に販売を始めた商品、その名も「まずい棒」。味が悪いわけではないことは容易に想像がつく。「マズいです!経営状況が…」。自虐的なキャッチコピーも消費者心理をくすぐる。

「発売日はハサンイヤイヤ」

 某メーカーのロングセラー商品を連想させる、中が空洞で長さ15センチほどの円筒形。値段は15本セットで648円。1本あたり40円超で、こちらは某メーカーの商品と比べて高い。「発売日は8月3日の18時18分。ハサンイヤイヤ(破産いやいや)ってね」。銚子電鉄の竹本勝紀社長はこう話す。

 社長自らメディアに出て「経営状況のまずさ」と「まずい棒のおいしさ」をPRし続けた。ネーミングはもちろん、不気味さ漂うキャラクターもネットを中心に話題をさらった。実際に、一部の駅と銚子電鉄が運営する土産品直売店だけで売り出したところ、消費者が押し寄せた。発売から1日で用意していた1万5千本が完売、インターネット通販を含めこの半年で売り上げは60万本を突破した。

まずい棒を持つ竹本社長。背後には老朽化した車両が並ぶ

 経営の方はどれほどまずいのか。竹本社長が「なんとか生き残っている状況」と語るように、路線は銚子市内の6.4キロのみ。沿線人口は年々減少しており、鉄道事業は毎年1億円ほどの赤字だ。車両も「(他社からの)お下がりのお下がり」といい、所有する6両とも製造から50年以上が経つ。

「鉄道を残すために……」

 経営を支えているのは物販で、1995年から販売しているぬれ煎餅もヒット商品だ。「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」と泣きの呼びかけを自社ホームページ(HP)でしたことで、こちらも注文が殺到。今では鉄道事業を差し置いて、売り上げの7割を占める。その売れ行きに陰りが出てきたことで、今度はまずい棒の開発・販売に乗り出し、陰りを補うのだという。

 まずい棒はこの3月、これまでのコーンポタージュ味にチーズ味を加えた。「地域の足」である鉄道を守るため、ぬれ煎餅に続く第2の収益の柱にする予定だ。「利用者が少なくなったとはいえ、通学する子供たちや病院に通うお年寄りはいる。まだまだ生き残らないといけない。これからも鉄道を残すために、鉄道以外のことを頑張っていく」。竹本社長は自嘲気味にまた笑った。