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 最低限の金融のルールを知っていれば、IT知識を生かして自由にアルゴリズムは作れる。「むしろ素人が作った方が、従来の発想に縛られない面白いアルゴリズムが生まれるのでは」。内田社長はこれまで一部の金融エリートのみが独占してきた高度な金融技術の垣根を引き下げようと考えた。

 「AIとテクノロジーの力で金融を広くオープンに解放したい」。こう標榜して16年5月にスマートトレードを設立。17年に政府系のDBJキャピタルなどから出資を受け、QuantXを開始した。今年1月にはネット証券大手の松井証券と業務提携。1900万円の出資を受け、松井証券の顧客である個人投資家の誘客も進める。足元のQuantXの利用者は7000人に膨らんだ。

 事業を軌道に乗せるためには、QuantXでより多彩なアルゴリズムのラインナップを揃えることが重要となる。そのため、内田社長はIT専門家としての本領を発揮した。機械学習などでよく使われるプログラミング言語「パイソン」に対応し、約200種類の金融関数を使用することができる開発環境をサイト上に公開。誰もが比較的手軽に自らのアルゴリズムを作成出来るようにした。

 さらに、アルゴリズムの有効性を検証するためバックテストをサイト上で簡単にできるようにし、金融知識が無くても自ら作ったアルゴリズムの実効性を確かめやすくした。「プログラミング経験の無い大学生でも、1カ月あれば簡単なアルゴリズムが作れる」と内田社長は語る。

スターエンジニアも登場

 スターも登場した。とあるエンジニアが作成したアルゴリズムは、17年半ばからの約1年で運用資産が3倍に増え注目を集めた。その後、アルゴリズムを再販した際には、注文が殺到しわずか3時間で販売停止になるほど。金融のプロでなくても結果を出せることが証明された。

 もっとも、年金基金など多額の資産を運用するプロ向けのアルゴリズムでは、作成の際、不測の事態に備えるために徹底した検証作業が必要となる。1人のプログラマーで全てをこなすのは難しい。そのため、サイトで販売されているアルゴリズムは一般投資家が短期的に資産の一部を運用するための手段とし、リスク対策に過度に労力を注ぐのではなく、作成者の柔軟なアイデアを求める形にした。多くの人に、気軽にアルゴリズムを作り、利用してもらうなかで、長い目で見て安全性の高いアルゴリズムを生み出そうという観点だ。

 「ITの進歩で、複雑な金融取引も一般の人が手がけやすくなっている。金融リテラシーを高めれば、より多くの人が金融による恩恵を受けられるようになる」と語る内田社長。同社は学生インターンを常時20人程度採用するほか、週1回はオフィスでアルゴリズムの開発勉強を開催する。これまで金融のプロが独占してきた高度な株式取引・分析手段をITで一般に開放する。新たな潮流が日本でも生まれ始めている。