
2月中旬の平日、朝7時。インド洋に面した東アフリカ最大の港湾都市、ケニアのモンバサにあるケニア鉄道のターミナル駅に着くと、厳重な荷物チェックが行われていた。
ケニアの首都ナイロビでは、その4週間ほど前にテロが起きたばかり。そのせいで厳しく検査しているのかと思ったが、普段も荷物の検査をしているらしい。この鉄道は中国が建設に携わった。中国では高速鉄道の駅に入る際に荷物検査があり、ケニア鉄道もそれを踏襲しているようだ。
「ニーハオ」。荷物検査の係員が中国語で挨拶してきた。

アフリカ各国を訪れる際に、取材のテーマの1つとしていたのが、各国での中国の存在感だった。モンバサからケニアの鉄道に乗るのもそのためだ。「アフリカでの中国の存在感はいかばかりか」。こんな問題意識を持って列車に乗り込むつもりだったが、駅舎に入る前に答えが出た気がした。
事前にインターネットで予約してもらっていた一等車の切符代は3000ケニアシリング(約3000円)。設置してある機械に名前と予約番号を入れると、カードサイズの切符が発行された。「アフリカはまだ発展していないアナログな大陸」。こんなイメージは早くも覆された。QRコードが印刷されたその切符は「中国の高速鉄道の切符にそっくり。フォントまで同じ」(日本人ビジネスマン)。

この「マダラカエキスプレス」は2017年5月末に開通した。モンバサ―ケニア間の約472kmを約4時間40分で結ぶ。工事期間は3年半、事業費は約38億ドル。そのうち9割を中国輸出入銀行が融資し、中国交通建設集団(CCCC)が建設を請け負った。
まだピカピカの駅舎の一等車専用の待ち合いフロアを見渡すと、缶や魚の骨の絵が描かれたゴミ箱があった。イラストとともに書かれていた文字は「可回収物 RECYCLABLE」。中国語だ。無料のチャイを飲みながら発車時刻を待ち、改札を通ると、その横には白いシャツを着た中国人らしき職員が2人立っていた。
改札前にある銅像が目に入った。モデルは14~15世紀の中国・明の武将、鄭和。モンバサに4回来たことがあり、「中国とケニアの相互理解を促進した」と解説があった。乗る前に十分、「この鉄道は中国によって作られた」ことを意識させられた。

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