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提供:プレイド

日本初のLCCとして運航を開始し、8年目を迎えたPeach Aviation株式会社(以下、Peach)。20~30代の女性から絶大な支持を集める同社ならではの“体験”は、顧客重視の姿勢と、CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」をはじめとする最新テクノロジーが支えている。

右から、プレイド担当の仁科奏氏、Peachイノベーション本部長の前野純氏、同本部コアシステム部長の村上篤実氏、コアシステム部 ウェブアーキテクト&オペレーション課長の中嶋哲也氏

Peachを支えているのは「Peachファン」

 2011年の設立以来、20~30代の若い女性をメインターゲットとする新しいエアラインのあり方を追求してきたPeach。「人件費も空港使用料も高い日本で、LCCは成立しない」とされた常識を打ち破り、設立から5年で累積損失を一掃、19年3月期まで6期連続で増収、営業黒字と快進撃を続けている。「アジアのかけ橋」を目指して路線を増やし、現在では国内19路線、国際線は中国・韓国・台湾・タイなど17路線が運航(19年10月1日時点)。累計旅客数は12年の就航以来約7年で3,000万人を突破した。

 「安全以外に聖域は設けない」という徹底したコスト削減によって「低運賃」路線を推し進める一方、ポップで愛らしい社名や、SNS映えする紫がかったフーシアピンクの機材、おしゃれで個性的なCAによる接客など、若い女性の心をつかむサービスでファンを増やしてきた。

 その体験がSNSや口コミで拡散され、今やPeachは、飛行機というよりも「空飛ぶ電車」、「気軽に行ける女子旅」のためのデバイスとして認識されている。Peachの躍進は、その楽しさを共有、共感する「Peachファン」たちによって支えられているのである。

現場で気づかされた「顧客の声」の重要性

 顧客の心をつかむPeachの体験は、徹底した現場主義によって生み出されている。顧客と直接触れ合うCAやグランドスタッフばかりでなく、いわゆる裏方の仕事にいたるまで、その姿勢が徹底しているのがPeachの強さだ。

 たとえば情報システム部門。Peachでは、「単なるシステムの“お守り役”ではなく、サービスの革新をインフラ面から支える役割」として、イノベーション本部という名称が与えられている。「各業務部門にサービス革新のためのアイデアを提案するには、我々自身が業務の現場をよく知らなければなりません。ですから当本部のスタッフたちは、パソコンに向かって開発や運用に没頭するだけでなく、なるべく現場に出るようにしています」と語るのは、イノベーション本部長の前野純氏である。

 とくに予約システムやWebサイトなどの開発・運用に携わるスタッフは、顧客との直接の接点が少ない。そこで、「空港に置くチェックイン機を自分で設置しに行ったり、カウンターで行き先や便名を表示するディスプレイを据え付けたりしながら、お客様とスタッフが交わす言葉に耳を傾け、現場の雰囲気などを感じています。おかげで、次の開発に役立つ様々な気づきが得られました」と語るのは、予約システムなど、顧客とのWeb上のタッチポイントにかかわるシステムや顧客データベースの開発・運用を担当する同本部コアシステム部の村上篤実氏である。

 顧客関連システムを扱うコアシステム部は、もともと営業部門の一部であったが、組織変更によってイノベーション本部に組み入れられた。

 「イノベーション本部は、もともと運航状況などを管理する基幹系システムを開発・運用してきました。それをコアシステム部が手掛ける顧客関連システムを一体化させることで、予約から搭乗、到着まで、つまりお客様の“旅の始まりから終わりまで”の情報がシームレスにつながったのです。お客様によりよいCX(顧客体験)を提供するための組織基盤が整ったと言えます」と前野氏は語る。

「チェックイン機の設置も、業者ではなくて自分たちで行います。現場に身を置くことで社員と仲良くなるし、空港に愛着も湧く。それが結果、品質を高める動機にもなるのです」と前野氏。