サプライチェーン全体の安全性を証明、「信頼チェーン」構築

 認識を変える必要性は分かった。しかし、一体どうすればよいのか? 後藤氏がプログラムディレクタを務める「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)/IoT社会に対応したサイバー・フィジカル・セキュリティ」プロジェクトにおいて、軸となるのが「信頼チェーン」である。

 このプロジェクトの研究目的は「IoTやサプライチェーンをつなぐ『信頼チェーン』の構築・維持を通し、サービスおよびサプライチェーン全体のセキュリティを確保する基盤を構築すること」(後藤氏)目的達成に向け「信頼の創出・証明技術」「信頼チェーンの構築・流通技術」「信頼チェーンの検証・維持技術」という3つの研究テーマに取り組んでいるという。

 順に説明していこう。1つめの「信頼の創出・証明技術」は、デバイスの安全性を証明する“信頼の元”を作る技術だ。

 例えば、信頼の元となる情報を生み出す技術の1つに、セキュア暗号ユニットSCUという半導体チップがある。従来のチップでは、価格や消費電力、大きさの面で、サプライチェーンを構成するあらゆるデバイスに搭載するのは難しかった。そこで、より小型かつ電力消費量が少なく、製造コストを抑えられるものを開発したというわけだ。LANケーブルのコネクタに組み込めるレベルのもので、プロトタイプが既に完成している。これで不正なデバイスが、ネットワークに接続するのを防ぐ(図1参照)。

図版1 SIPプログラムが目指すセキュア暗号ユニットSCUの実用化の方向性
図版1 SIPプログラムが目指すセキュア暗号ユニットSCUの実用化の方向性
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 さらに2つの研究テーマについて、後藤氏は次のように説明する。

 「『信頼チェーンの構築・流通技術』は、創出した“信頼の元”となる情報をサプライチェーンの中でセキュアに流通させる技術を指します。例えばオフィスビルの管理は、エレベータなどの設備サービスや衛生管理サービスなどを利用して行うケースが多い。これを各サプライチェーンの中で、セキュリティ要件が守られていることを確認できるようにします。これで初めて『このビル全体が安全』だと言えるようになり、付加価値も向上するのです(図2参照)。また『信頼チェーンの検証・維持技術』は、一度構築した『信頼チェーン』が安全に運用されていることを検証・維持するもの。この研究では、社会実装に必要な導入・運用マニュアルや、組織・人材開発の取り組みも行います」

図版2 オフィスビルの運用管理における信頼チェーンの構築と効果
図版2 オフィスビルの運用管理における信頼チェーンの構築と効果
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