「性悪説」で制度設計すれば不正は減る

不正会計は洋の東西を問わないのでしょうか。

久保利:2001年に米エンロンで不正が発覚するまでは似たような状況でしたが、それ以降、米国では大きな不正会計はほとんど起きていません。翌年、SOX法(サーベンス・オクスレイ法)が制定されたことが、経営者の考え方を大きく変えたからです。

 SOX法の狙いは、人間が関与することによって変えられる「あいまいさ」をなくすこと。根底にあるのは「性悪説」です。企業のCEO(最高経営責任者)は、チャンスがあれば不正に手を染めるという前提で、制度が設計されています。

 利益相反や癒着につながる余地を会計士から奪い、社外取締役も厳格に選んでいきます。人間の弱さを見つめて、正しい行動を取るように縛っていくことが、不正会計を防ぐのに必要だという考え方です。

手足を縛られることに対する不満の声もありそうです。

久保利:企業経営者はうれしくないでしょうが、不正を指示されることから解放される従業員は喜び、株主もうれしいでしょう。悪党に転じる可能性があるCEOを野放しにしない、できない組織にすれば、みんながハッピーになるはずです。

 厳格かつ平等なルールの中でどうやって勝つかが経営者に問われます。会計はフェアであるべきです。独裁者のようにルールをねじ曲げてしまったら、同業との比較などできません。どの会社が優れているのか、投資家は判断できないでしょう。

 ルールの統一と厳正化は世界的な潮流です。決して止めることはできません。その中で日本だけが独自ルールにこだわっていると、世界水準から取り残されています。

 昔はアジア諸国で1番だったかもしれませんが、今の日本企業のガバナンスは遅れていると思います。ルーズにぬるま湯に浸っている間に、多くの国に追い抜かれてしまった。昔と変わらず不正会計が後を絶たないのは、日本が旧態依然の状態で足踏みしていることの証明です。

企業は何をすべきでしょうか。

久保利:一番大事なのは、頭のCEOをきちんとすること。当局やメディアがいくら旗を振っても、CEOが嫌だといったら不正を防ぐための制度は導入されません。

 本来なら、指名委員会などの制度を整え、社外取締役が後継者育成や選任に関与すべきです。会計士や弁護士などの専門家が経営の中枢に入ってチェックする仕組みも必要でしょう。日本の財界は規制強化から逃げ回らず、きちんと世界の水準と向き合うべきです。

 日経ビジネスの2019年2月25日号「実録 不正会計」では、そんな不正会計の手口と背景に迫った。

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