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瓦屋根の家々が並ぶ福井県の街並み。幸福度日本一の同県は全国区トップレベルの 持ち家率を誇る(写真:PIXTA )

 「働き方改革」を掲げ、官民挙げて仕事の効率化を進めようとしている日本。だが残業時間の削減を進めるには、仕事のやり方の見直しに加え、もう一つやらねばならないことがある。多くの会社にあるであろう「帰りにくい雰囲気」の一掃だ。

 そもそもあの雰囲気は日本特有のものなのか。そうでないとすれば、「ワークライフバランス」の先進国ではどのように「帰りにくい雰囲気」を打ち消しているのか。日経ビジネスでは2019年2月18日号「どこにある? ベストな人生」の取材で、ワークライフバランスを保ち、高い幸福度を実現していると言われる国の一つ、フィンランド大使館を取材。「帰りにくい雰囲気」についても、同国の事情を大使館に聞いてみた。

 東京・南麻布にある大使館。洗練された北欧デザインの家具に囲まれた室内で、出迎えたのは報道・文化担当参事官のマルクス・ コッコ氏。「フィンランドではリラックスするために室内で靴を履くことはあまりない」と話す通り、奥様が編んだウールの靴下姿で現れた。

フィンランドに「帰りにくい雰囲気」がない2つの理由

 コッコ氏の話によると、フィンランドには、日本企業にあるような「帰りにくい雰囲気」はない。

 その理由は主に2つあって、一つは「同僚がお互いのオフの時間を尊重し合う傾向がとても強い」ことだ。その取り組み方はかなり過激で、夜や休日など相手が休んでいる時にメールを送る事は日本などに比べ強く批判される対象となる。メールに限らず、他の社員のプライベートに悪影響を与えていないか、互いを監視するような空気があるという。

 これは同じく北欧のワークライフバランス先進国、デンマークなどでも見られる現象だ。首都コペンハーゲンのIT企業で働く37歳の男性、ヘンリク・ペデルセン氏によると、皆が急いで帰らなくてはいけないのでタイムマネジメントに関する意識がとにかく強い。

 会議は1時間と決めたらそこで終了。時間内に何も決められなければ、会議の主宰者はダメ社員の烙印が押される。皆の時短の妨げになっている社員を待ち受けるのは、最悪の場合、解雇だ。解雇条件が日本に比べて非常にゆるく、1カ月前通達で自由に社員を辞めさせられる。どの企業も非常に緊張感のある職場となっており、この緊張感もただでさえ速い仕事の速度をさらに速める役割を果たしている。

 「帰りにくい雰囲気」などは微塵もなく、どちらかと言えば蔓延しているのは「早く帰らないといけない空気」というわけだ。

 さらに、フィンランドに「帰りにくい雰囲気」がないもう一つの理由。それは「フィンランド人の多くが、終業後にやるべきことがあること」だという。例えば散歩だ。

 首都ヘルシンキであっても、中心部から歩いて20~30分すれば美しい森や草原となる。いつでも簡単に大自然に触れ、心をリセットできる。また、さらにフィンランドでは、仕事とは別のコミュニティ活動が盛んで、仕事終わりに趣味のギターや絵画などを友人同士で楽しむことが習慣となっている。意味もなく会社にいる暇などないと言うわけだ。