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不易の理念をきちんと持っていないと、会社が間違った方向に進んでしまう。不祥事企業に見られる現象ですね。

「勝った、負けた」は関係ない

髙田:大きい不祥事を見ていたら、理念がぶれたのかなとちょっと思ってしまうところがありますよね。利益優先とか。

 実は、僕は地元のJ2リーグ、V・ファーレン長崎の社長を2年前からやっています。そこでも、「勝ち負けは手段であり、目的じゃない」と言っています。目的は、サッカーを通してファンとどういう夢をつくっていくか。それは僕がジャパネットを経営していた時とつながっているんです。

 僕はサッカーができないけど、目指すものは一緒です。理念はもうすべて一緒。ただ手段が違うだけ。ボールをけるか、物を販売するかの違いだけです。

実際にやってみて、やはり同じだなと思うところは。

髙田:みんな同じです。僕はテレビでしゃべっているときも、シューズを売れば歩く人の健康になる姿を想像するし、カメラを売ったら写真を通して家族の人生がどう変わるかと考える。サッカーを通して来る人の笑顔を見れば、人に生きる力を与えることが目指す所だと再確認できます。頑張らなきゃいかんなと思いますね。勝っても負けてもそういうものをつくり出すのが、サッカーチームの課題ですよね。

それまでチームは債務超過で大変だったと思いますが、髙田さんが社長に就任して、その年末にJ1に昇格を決めました。

髙田:まだ、やっぱり勝負という部分が大半を占めているんですよね。「そんなことを言っているからJ2に落ちた」と言われるかもしれないけど(笑)。

いやいや、1回上がっただけでも奇跡です。

髙田:そういう声もあるんですけれどね。まあ、そこは真摯に受け止めてやっていく。勝ち負けより、一生懸命やる姿の中に感動があると。「愛と平和と一生懸命」だと。

 そうしたらみんな考えてくれて、相手をリスペクトするという、「正々道々」と言うようになってきました。そういう中で「一生懸命」の結果として強いチームができてくる。だから、勝つチームをつくることが目的じゃないんですよね。

 「強いから応援する」と「応援してくれるから強くならなきゃいけない」。同じように聞こえるんだけど、「強いから応援する」だと、弱くなったときに応援する人がいなくなるじゃないですか。やっぱりたくさんの人が応援に来るから強くなろうというのがいい。

まずお客さんがあって、応援してくれるのだから、その人に自分たちができることをやっていく。それが一生懸命のプレーなんでしょうね。

髙田:そうですね。僕はスタジアムで会話をしますから、皆さんと。

そうなんですか。

髙田:もう何万人と会話をしたか分かりません。ほとんどの試合に行っていますから。相手のスタジアムに行って交流するんですよ。

珍しいですね。

髙田:相手のチームのサポーターと握手したり、サインしたり、写真を撮ったり、歩くだけで何百人と話します。そうしたら長崎に来てくれる人がものすごく増えましたね。

ここでも現場でトップセールスですか。

髙田:だから、V・ファーレンというのは名前だけはかなり知っていただくようになったんですよ。あるとき、75歳ぐらいの奥様が来られて、「社長、実は私、1年前大病をしまして、ある機会があってサッカーに来たら、すごく元気になった」って言うんですよ。やっぱりそういうことなんですよ。サッカーというスポーツが持つ力は。

しかし、相手チームのサポーターと交流するって、そんな社長はいないんじゃないですか。

髙田:私は各地に友達がいっぱいいますよ。知り合いになって、それからこっちに来たときなんかは、土産を持ってきてくれたりね。

 何でかって、サッカーも敵味方となれば戦って、それだけで終わってしまうんですよね。でも交流すると、V・ファーレンのサポーターと向こうのサポーターが一体化する。そうしたらサッカーの人を元気にする力が10倍になってくるんですよ。交流人口を増やすということで、長崎にその方たちが来たら宿泊しますね。消費も観光もしてくれる。

 J1での初勝利は、清水エスパルス戦だったんですよ。勝ったのに相手チームの熱烈な応援団のところに入っていって、「どうもどうも」とあいさつしていたら、「あんな所に入る人、おらんですよ」と。でもファンの皆さんは、僕にそんなこと言う人はいなかったですよ。「いや、今度は勝つからね」とか、「負けたー」とか言う人ばっかりで、握手してもらったんですよ。それで話していたら、今度は、長崎の試合に来てくれた。最終戦でしたが、「チャーターで行くよ」と。

そういう交流があるんですね。

髙田:何百人ですけど、一部は飛行機をチャーターして長崎に来たんですよ。川崎フロンターレさんも、バスで駐車場に来たので、そこにうちのマスコットと迎えに行って一緒に写真を撮ったりね。

 だから、敵味方はないです。そうしたらいつの間にかV・ファーレン長崎のファンと向こうのファンが友達になっている。そういう変化が昨年1年間だけですごく起きました。そこが目的ですよね。

これって、海外などでサッカーチームのファン同士がけんかしている映像が流れますが、かなり違いますね。社長が相手のスタジアムに行って、相手のファンにあいさつして回って、それで一体になっていくアプローチですか。

髙田:あんまりなかったのかな?

聞いたことないですね。

髙田:清水エスパルスさんに行ったときに、ピッチ上でちょっとあいさつしたんですよ。それも「あり得ない」と言われたんですよ。でも、知らなかったから普通に「どうも」ってあいさつしたんですよ。だから僕、最終戦に来た清水の社長に、「今度は社長がしゃべってください」と言ったんですよ。それも面白いじゃないですか。

 うちのスタジアムのスクリーンには、相手が入れたゴールシーンも流すんです。そうしたら、一緒に見ていた相手の社長がやってきて、「私はびっくりした、相手チームのゴールを再生して流すってどういうことですか」と言われて。「いや、それって珍しいですか」と。「もう、私は何十年とサッカークラブの社長をしているけど、あり得ない」と言われて。

髙田さんの考え方でいくと、サッカーの試合はそれ自体が1つのパッケージ商品だから、敵も味方もないんですね。

髙田:そういう所は、もっとスポーツで変化をもたらしていかなきゃいけない所かもしれませんね。やはり、「勝った、負けた」ではないんですね。その先に、見てくれた人に何をもたらすことができるのか。そこが本当の目的です。ジャパネットとまったく同じです。だから、両チームのファンが一体となって熱狂し、スタジアムの外でも交流し、元気になることができる世界をもっと広めていきたいと思っています。